伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
韓国と中東の強い絆
マーズ(MERS)も感染そのものは収束の兆しをみせているのだろうか。
6月23日現在、感染者数は175人と前日より2名増えているものの、新たに亡くなった方はおらず、隔離対象者も2805人と前日より1028人も減っている。逆に隔離を解除された人は1万718名と1万人を超え、さらに退院も54名となっている。
日本にいる友人が「周囲の人に感染されている方はいないか」と心配のメッセージをくれたが、人口5000万人中の175名となると、29万人に1人の割合。身近に罹っている人がいる確率はとても低い。病気は心配するに越したことはないが、あらためてメディアがつくりあげるイメージについて考えもする。
そんな中、韓国の人々の緊張が少し和らいだのは、7月3日に光州で行われるユニバーシアードに、台湾代表が参加を決定したことだ。
次回開催地にもかかわらず、当初は参加を保留にするなど、マーズに関しては慎重だった台湾の参加決定が、収拾の兆しを表すシグナルであってくれたらと思う。
さて、このマーズだが、正式名称は「中東呼吸器症候群」である。今回、WHOをはじめ、世界の人々が注目したのは、本来は中東の病気であるマーズが、どうして韓国で広まったのかという点だ。
感染の拡大についてはこの連載で見てきたとおりだが、それ以前に、日本人が思っている以上に「韓国と中東の結びつきは強い」。
最初の患者はサウジアラビア、バーレーンなど中東諸国をまわり、韓国帰国後に発症した。企業名が出てきていないのを見ると、大手企業の駐在員のような身分ではないのだろう。
韓国の海外ビジネスにおいて、個人業者の活躍は著しい。身近でも「仕事で中東に行っていた」ような話は、しょっちゅう聞く。韓国で長く暮らした人なら、韓国人と中東の
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