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中央省庁でも「働き方改革」が始まった!

総務省のオフォス・スペースを見る

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 ついに中央省庁(いわゆる「霞が関」)でも、「下からの働き方改革」が始まった!

 この20年は、「橋本行革」の結果として2001年に行われた中央省庁再編や、現在も進行中(?)の公務員制度改革など行政改革や政治改革のいわゆる「上からの改革」、あるいは制度改革などの「大きな改革」が様々な形で行われてきた。

 だが現在は、2009年の政権交代の「失敗」とその結果としての「政権再交代」によって、「上からの改革」「大きな改革」は、全く意味がなかったとはいわないまでも、その意味は何だったのかという疑問や改革疲れの状況が生まれている。極端にいえば「上からの改革」は失敗した感がある。

 だが、次に向けての明るい方向性や可能性が生まれているとはいえず、透明感や閉塞感は今なお続いている。

 他方、急激な人口減少や少子高齢化、労働生産人口の激減などによって、働き方を短期間で大きく変えていく必要性は急速に生まれているのである。

 そのことは行政や中央省庁においても同様で、公務員数の削減など様々な活動や試みが行われてきた。だが、大きな成果が生まれたとは必ずしもいえない。

 安倍政権では、内閣人事局を設けたり、成長戦略との関係で女性の活躍や働き方に関する様々な試み、法制度改革や整備を進めようとしている。これは、先の「上からの働き方改革」であるが、最近の改革の特徴は、「下からの改革」も起きていることである。

 その具体例として、いくつかの省庁の特に若手や女性から、次のような改革案が出されている。

 ・外務省女性職員の勤務環境改善のためのタスクフォース「-しなやかに働き、活力ある外交-外務省勤務改善のための具体的改善策」(2010年4月)
 ・財務省改革プロジェクトチーム「財務省が変わるための50の提言~Motivation, Open, Flexible~」(2010年4月)
 ・文部科学省大臣官房人事課[2014]「文部科学省女性職員の活躍推進プログラム~大杼共に仕事と家庭の両立が図れる職場緩急の実現に向けて~」(2014年4月)
 ・霞が関で働く女性有志「持続可能な霞が関に向けて―子育て等と向き合う女性職員の目線から―」(2014年6月)

 さらに、そのような現場というか草の根的な動き以外にも、組織的な「下からの改革」の大きな一つの動きがある。それは、総務省行政管理局が中心となって、行政イノベーション研究会の「クオリティを追求し自ら変革を続ける行政の実現に向けて(行政イノベーション研究会報告書1.0)」(2015年4月)などを基に行われている試みである。

 ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)という手法を用いた、霞が関初の試みで、「現場のニーズから(霞が関を)変えていく」というもの。BPRとは、「既存の組織や業務を根本的に見直し、プロセスの視点で職務、業務フロー、管理機構、電子決済やオンライン化なども含めた情報システムなどを再設計(リエンジニアリング)することで、業務の効率化を高める企業改革手法」(出典:コトバンク)のことである。

 つまり、小さな改革をたくさん進めて、大きな変化を生み出していき、各省庁の課題のポイントをきちんと確認していこうというものである。民間専門家(CIO)の支援の活用や法案作成業務のシステムの作成、総務省による他省庁の取り組み支援なども行い、従来の霞が関の手法とは異なり、成果を横に活かしていくやり方を取り入れている。また本改革に関するロードマップを2015年8月までに作成する予定であるという。

 この推進を担当する上村進総務省行政管理局長は、次のように指摘している。

 「この試みがすぐに霞が関文化に浸透するとは考えていない。しかし、各省ともこのままでは回らないと考えているので、この試みは確実に進むと考えている」
 「内閣人事局とも連携をしている。また、効率化したところには、インセンティブを与えることも考えている。単に減らすのではなく、その余剰を需要のあるところに、回せるようにする」

 行政を改革する場合、文書により改革案が作成され、それに基づいて行われることがほとんどだ。今回の改革でも、もちろん上述したような報告書が作成された。

 だが、今回の改革の異なる点は、報告書ばかりではなく、変革しながら実際の業務を行うオフィススペースがつくられ、そこで日々執務や実務が行われていることである。

 それは、中央省庁の集まる霞が関の合同庁舎2号館9階の総務省行政管理局情報システム企画課のあるスペースに広がっている。

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