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[3]自然エネルギーに突き進むデンマーク

名高い風車、そして日本人が開発した波力発電……

伊藤千尋 フリー・ジャーナリスト

 デンマークの首都コペンハーゲンに船が入港したとき、前方の港の突端から沖合にかけて真っ白な風車が20基、並んでいるのが見えた。高さ102メートルの風車が2・5キロにわたって海上に連なる。壮観だ。そばをヨットや帆掛け船が航行する。

コペンハーゲンの港から沖合に並ぶ風車拡大コペンハーゲンの港から沖合に並ぶ風車=撮影・筆者
 着岸すると、すぐに風車見学に出かけた。ピースボートが用意した「デンマークで考える自然エネルギーの未来」というツアーに参加したのだ。

 案内してくれたのはデンマーク風力発電機所有者組合の理事を務めるハンス・ソーレンセンさんだ。

 この風車のうち10基は電力会社のものだが、残る10基は8500人の市民が会員として支える沖合発電協同組合の所有だ。

 ソーレンセンさんは、その理事もしている。この20基だけで首都の電力の3%をまかなう。

 風車の近くに行くと、陸上にも3基が連なっていた。こちらは2013年に建てられたばかりの最新式で、高さは115メートルある。1基の出力は2メガワットと強力だ。羽根の性能を改善したところ、効率が30%上がったという。

 騒音の被害を防止するため、風車と道路の間には高さ10メートルほどの堤防が築かれている。この3基だけで3万3000世帯の電力をまかなっている。

 デンマークの風車は世界に名高い。欧米や日本にもデンマーク製の風車が数多く建つ。

 この国で風車が普及し始めたのは1979年だ。73年の石油ショック後にエネルギー源を石炭火力に替えたが大気汚染が問題となり、エコな風力に行きついた。99年に発電と送電を分離したことも、一般市民がいっそう積極的に風力発電に取り組むことにつながった。

 2014年は国内エネルギーの39%が風力発電によって産み出された。2017年に風力発電を大幅に増やすことにしており、2020年には50%に引き上げる計画だ。さらに今後20年のうちに風力の発電量は使用量の200%になるという。一方で石炭火力発電はすでに20%に下がっており、あと20年でゼロにする計画だ。

 この国の風力発電の20%は一般市民の所有だ。その大半が協同組合の形である。やる気のある人が提案し、発起人が6人くらい集まったところで組合を立ち上げる。一人一票の投票権を持ち、民主的に決めていく。組合員の数は現在、約4万人にのぼる。

 協同組合はデンマークの伝統だ。内村鑑三の『デンマルク国の話』にも描かれたように、19世紀の敗戦から立ち直るさい、国民が力を合わせて荒れ地を農地にし、利益を組合員が平等に分ける仕組みが広がった。農業がすたれた今も協同組合の伝統は残った。

説明するソーレンセンさん拡大説明するソーレンセンさん=撮影・筆者
 ソーレンセンさんはこうした説明のあと、「風力のほかに現在、開発している有力なエネルギーがある」という。

 それは海の波が上下する力を利用した波力発電だ。2003年に設置したカニのような形をした波力発電機の映像を示して波を取り込む仕組みを説明した。

 「風がないときでも波はある。風力と波力を組み合わせるとうまくいく。今後の開発で波力発電の協同組合にも風力と同じ4万人くらいの組合員が集まることが見込まれる」と語る。

 彼はこう言った。

 「そもそも波力発電を開発したのは日本のマスダさんなのに、なぜ日本では活用されないのだろう」

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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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