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サハ共和国の夢とプリマコフ元首相の死(上)

地政学をテーマにしたロシア、中国、韓国、日本の専門家による国際会議から

大野正美 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

 ロシアのサハ共和国に行ってきた。

 東シベリアと極東の間に位置し、昔のソ連でヤクート自治共和国と呼ばれたところだ。

 気温が冬は氷点下50度に達し、夏はプラス35度くらいまで上がる。寒暖の差は実に85度だ。南極を除くと世界最低気温のマイナス71・2度を記録した北半球の「寒極」オイミャコン村がある。あとは、ダイヤモンドがたくさんとれる、といったところが日本人のこの土地に対する平均的な知識ではないだろうか。

 とにかく広い。面積は310万平方キロと、世界第7位のインドより少し狭いだけで、日本の約8倍もある。

 しかし人口は95万7000人弱しかない。それでもダイヤモンドのほか、天然ガス、石炭、金などの鉱物資源がすこぶる豊富である。

 行ったのは、サハ共和国の初代大統領であるミハイル・ニコラエフ現下院議員(77)が主催して首都のヤクーツクで開いたロシア、中国、韓国、日本の4国の専門家による国際会議「東方の地政学 21世紀」に参加するためだった。

ヤクーツクの北東連邦大学で開かれた「レナ対話」。左端がニコラエフ元サハ共和国大統領。一人おいて右がグラチョワ助教授。その右が李所長=6月25日、大野正美撮影ヤクーツクの北東連邦大学で開かれた「レナ対話」。左端がニコラエフ元サハ共和国大統領。一人おいて右がグラチョワ助教授。その右が李凤林所長=2015年6月25日、撮影・筆者
 国際会議は共和国を流れるシベリアの大河であるレナ川の名から「レナ対話」と呼ばれ、今年で3回目になる。

 資源は豊富だが、気候がきびしく、人口も少ないこの共和国の発展を、中韓日という3隣国との協力によっていかに実現していくかを話し合うのが会議の主な目的となっている。

 さて、2014年に起きたウクライナ危機でロシアと米欧との関係が急に冷え込んだことから、「地政学」をテーマにした今年の会議にも、その余波が当然及ぶことになった。関連した議論を紹介してみよう。

 モスクワからきたロシア軍参謀本部軍事アカデミーのタチヤーナ・グラチョワ助教授は、当然のように超大国・米国の進める新世界秩序やグローバル経済の危険性を強調した。

 「米国とその政策は各国の国境をくずし、主権を侵す危険性をはらんでいる。各国にとって軍事的な脅威であるだけでなく、民族国家のアイデンティティ、伝統にとっても脅威である。ロシアは西にある国々の中では最も東に位置し、東方キリスト教のロシア正教を信じる点からも何よりもまず東の国なのだ。そうしたロシアと東アジアの国々は経済的にも軍事的にも協力し合い、自らの主権、伝統、国家性を守っていかなくてはならない」

 こういった調子だ。

 興味深かったのは、ロシアの

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