United Nations、nuclear、force をどう訳す?
2015年08月18日
United Nationsという単語は、日本語で「連合国」と「国際連合」という2つに訳し分けられている。これを知ったときは、けっこうショックだった。大学生の頃だったと思う。
United Nationsは米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が考案した名前で、1942年の「連合国宣言」で初めて用いられた。この宣言は、連合国(United Nations)が一致団結して、ドイツ、イタリア、日本などの枢軸国と戦う決意と合意を文章にしたものである。
連合国宣言は、英語でDeclaration by United Nationsと書く。
このUnited Nationsは、第二次世界大戦の終わりごろにかけて開かれた諸会議を経て、名前はそのままに国際機関として様変わりした。こちらが、「国際連合」と日本では訳されている。正式な発足は1945年の10月24日だ。
国連と聞くと「世界の平和を守り、各国の友好を深めるための国際的な組織」をイメージする人が多いと思う。角川の国語辞典もそう言っている。
「連合国」も「国連」も英語では同じUnited Nationsにほかならない。
歴史的な経緯は専門書やネットに任せるとして、要するに、日本は同じ英単語を独自に訳し分けている。日本語だと名実ともにおよそ別モノみたいに聞こえる。しかし、英語では、戦勝国グループ(連合国)が戦後に国際機構の形(国際連合)になったという一貫性が感じられる。
「イスラム国」がニュースで取り上げられるようになったとき、日本語での表記が議論になった。国家であるかのような誤解を与えるとか、いきなりISIL(アイシル)じゃあ何のことだか分かりにくいとか、様々な意見が出た。
なかには、アラビア語での名称の頭文字をとった「ダーイシュ」という名前を使う「通な」ツワモノも登場する。NHKは「イスラミック・ステート」とカタカナで表記することで、この問題に対応した。
この方法に従えば、「連合国」と「国連」という2つの顔を持つUnited Nationsも「ユナイテッド・ネーションズ」で表記を統一することができる。訳し分けの問題は消えた。
しかし、なにか違う。カタカナで書いたとたん「連合国」という言葉から立ちのぼる硝煙の匂いは消える。「国際連合」という理想と現実政治のせめぎあうような感じが出てこない。
世界大戦と戦後70年が錯雑するUnited Nations(連合国/国連)という言葉には、カタカナ一発変換を拒絶する歴史的な重たさがある。
日本独自の訳し分けをしている単語というのは、これだけではない。そして、日本語での表記が世界観を変えることがままある。
例えば、nuclear plantは、
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