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核兵器までも運べる「兵站法」を作ってよいのか?

確定判決を無視する決定的違憲内閣

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

「後方支援=兵站」により被爆国が核兵器も運搬可能に?

 広島・長崎の原爆の日を前にして、参議院の質疑で、原爆被害者から見たらとんでもないことが判明した。

 自衛隊が海外で行う「後方支援」という美名の下の「兵站」について野党が追及したところ、政府は、法律上、武器弾薬の輸送としてミサイルや戦車、化学兵器、毒ガス兵器に加えて、核兵器も可能と答えたのである。また、弾薬の提供についても劣化ウラン弾、クラスター爆弾と同じく核兵器も可能とした。

 法律上は可能でも、実際には政府の総合的な政策判断によって、核兵器の輸送や提供は行わない、と政府は説明している。

 安倍首相は衆議院予算委員会で山井和則・民主党議員の追及に対して、それは政策的にはありえず「机上の空論」だとして「私は総理大臣として核輸送はあり得ないと言っているのですから、間違いありませんよ!」(8月7日)と述べた。

平和記念式典で話す安倍晋三首相拡大広島の平和記念式典でスピーチをする安倍晋三首相=2015年8月6日
 けれども、政策判断ということは、逆に言えば仮に次の政府が政策判断を変えれば、核兵器の輸送や提供も行えるということに他ならない。

 しかも、安倍首相はその前日の広島の平和記念式典のスピーチで、自分自身の判断で非核3原則に対する言及を省いた。

 批判を浴びて長崎のスピーチでは入れたものの、非核3原則にふれたくないという気持ちが働いたのだろう。

 これを見れば、すでに武器輸出3原則は修正したのだから、同様に非核3原則に変更が加えられて、核兵器の輸送や提供を行うこともあり得ないことではないのである。

憲法クーデターの前兆

 日本の平和憲法において、海外の戦地近辺で同盟国のために核兵器の運搬や提供を行うことが決して認められないことは、常識的に考えればわかるだろう。

 それにもかかわらずこのような可能性が生じてくるのは、そもそも安保法制が決定的な違憲法案であり、それを強引に成立させようというのは憲法クーデターだからである(「『法的安定性』の破壊こそが『憲法クーデター』だーー『決定的違憲』の安保法制」WEBRONZA)。

 多くの「クーデター」には、その予兆がある。 ・・・ログインして読む
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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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