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[7]数万年前の氷、藻がからむ「魔の海」

北極圏の間際から熱帯へ

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 航海で達した北限はアイスランドの首都レイキャビクだった。ここから船は北米大陸の東岸に沿い西インド諸島を抜けてカリブ海に入って、南米ベネズエラの港町ラグアイラに到着した。

 北極圏の間際から赤道に近い熱帯まで、12日で一気に南下したのだ。南北の差が大きかったため、接した自然環境もめまぐるしく変わった。

氷、氷、氷……

 アイスランドを夜に出港した船は、南西に向けて航海し、2日後の午前8時にグリーンランドの沖合に達した。ここは海面に流氷や氷山が浮かぶ氷海だ。まるで白い紙をちぎって投げたように小さな氷塊が海面を埋める。氷の大きさも形もさまざまだ。

海面に氷をぶちまけたような氷海拡大海面に氷をぶちまけたような氷海=撮影・筆者
 海面からの高さが30メートルもあるデッキから見下ろすので実際の大きさはわからないが、長さ1メートルから10メートルくらいのものまで大小の氷塊が船の周囲を取り巻く。

 溶けた形が白鳥のようなもの、亀のように丸いもの、中には土がついたまま黒い色をした氷塊もある。

 「クジラだーっ」

 海を見つめていた人々から突然、声が上がった。

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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) 国際ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。「九条の会」世話人。主著に『心の歌よ!』(シリーズⅠ~Ⅲ)『連帯の時代-コロナ禍と格差社会からの再生』『凛凛チャップリン』『凛とした小国』(以上、新日本出版社)、『世界を変えた勇気―自由と抵抗51の物語』(あおぞら書房)、『13歳からのジャーナリスト』(かもがわ出版)、『反米大陸』(集英社新書)、『燃える中南米』(岩波新書)など。公式HPはhttps://www.itochihiro.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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