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[7]数万年前の氷、藻がからむ「魔の海」

北極圏の間際から熱帯へ

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 航海で達した北限はアイスランドの首都レイキャビクだった。ここから船は北米大陸の東岸に沿い西インド諸島を抜けてカリブ海に入って、南米ベネズエラの港町ラグアイラに到着した。

 北極圏の間際から赤道に近い熱帯まで、12日で一気に南下したのだ。南北の差が大きかったため、接した自然環境もめまぐるしく変わった。

氷、氷、氷……

 アイスランドを夜に出港した船は、南西に向けて航海し、2日後の午前8時にグリーンランドの沖合に達した。ここは海面に流氷や氷山が浮かぶ氷海だ。まるで白い紙をちぎって投げたように小さな氷塊が海面を埋める。氷の大きさも形もさまざまだ。

海面に氷をぶちまけたような氷海海面に氷をぶちまけたような氷海=撮影・筆者
 海面からの高さが30メートルもあるデッキから見下ろすので実際の大きさはわからないが、長さ1メートルから10メートルくらいのものまで大小の氷塊が船の周囲を取り巻く。

 溶けた形が白鳥のようなもの、亀のように丸いもの、中には土がついたまま黒い色をした氷塊もある。

 「クジラだーっ」

 海を見つめていた人々から突然、声が上がった。

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