2015年09月08日
終戦記念日の前日、「平成27年8月14日 内閣総理大臣談話」いわゆる安倍談話が発表された。この談話に対する注目は第二次安倍政権発足以降、絶えず続いてきた。
2015年に入ってからはその傾向が一層強まり、アジア・アフリカ会議(バンドン会議)における演説や、アメリカ議会上下両院合同会議における演説など、実際には安倍談話に関係していない発言も8月に行われる談話のいわば「前哨戦」と位置づけられ、どのような文言が入るのかが注目された。
本来であれば、一国の政治指導者が他国を訪れる際には、その地域や組織に対してどのような発言を行うのかのみに注目が集まることを考えれば、それだけこの問題がアジア太平洋戦争の当事国であるアメリカや中国、あるいは植民地支配下にあった韓国において大きな関心を集めていた証左といえる。
一方、安倍首相も2015年2月に、私的諮問機関として、「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(以下、懇談会)を設置し、6回の議論を重ねるなどして、談話内容を検討する姿勢を見せた。
第1回の懇談会会合には安倍首相も参加し、会として、(1)20世紀の世界と日本の歩み。及び、20世紀の経験から汲むべき教訓、(2)日本の戦後の歩み。特に、戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献への評価、(3)戦後日本の和解の道の歩み、(4)21世紀のアジアと世界のビジョンの描き方。及び、日本の貢献、(5)戦後70年に当たって日本が取るべき具体的施策、という5点を議題とすることを求めている。
そうした状況を踏まえ、本稿では8月6日に発表された懇談会の「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会報告書」(以下、報告書)、8月14日に発表された安倍談話、そして、それを受けて翌日の韓国の独立記念日に行われた朴槿恵大統領演説を時系列で見ることで、数年にわたって注視された安倍談話がどのように決着し、将来において、どのような意味を持つのかを明らかにしていく。
まず、8月6日に発表された懇談会の報告書であるが、民間の私的諮問機関とは位置づけられているものの、全文や組織概要等が総理官邸のウェブサイトに掲載され、安倍談話発表の記者会見の際もたびたび安倍首相からその存在が語られたこと、そして安倍談話の構成自体が報告書に一定程度沿っていることからも、私的なものというよりも公的あるいは準公的なものと位置づけられる。
換言すれば、報告書は「日本の有識者」と首相が位置付けた関係者による見解であり、日本における歴史観の表出の一つなのである。
ただ、その評価が大きく分かれるものとなったことは予め述べておかねばならない。
日本国内や懇談会関係者に近い評者などからは一定の評価がなされたが、韓国国内あるいは日本と東アジア諸国との関係改善を望む者にとっては、疑問を感じざるを得なかった。
そこで、後者が報告書のどのような点を問題視したのかを見ていきたい。
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