メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

現地報告:イスラエルのガザ攻撃から1年(下)

絶望に追いやられる住民

川上泰徳 中東ジャーナリスト

ガザ再建プランの責任者に会う

 ガザ再建は進んでいないが、私が訪れた1カ月ほど前から、一部の更地で、ぽつぽつと新しい住宅の建設が始まっているのも目にした。自治政府を通じて再建が支援されている住宅だ。

 再建について聞くために、都市開発コンサルタントのアリ・アブシャフラさん(69)と会った。

ガザの再建についてのパレスチナ自治政府のリポートの監修をしたアブシャフラさん拡大ガザ再建についてのパレスチナ自治政府のリポートの監修をしたアブシャフラさん=撮影・筆者
 2014年9月にパレスチナ自治政府のPECDAR(パレスチナ開発経済評議会)が作成した「ガザ再建・発展計画」の監修者である。

 「建物の再建は、2014年8月の停戦後、住宅の一戸一戸についてもすべてイスラエルの同意が必要とされるようになった」という。

 申請先はパレスチナ自治政府だが、イスラエルが同意しなければ建設資材を入れることができない。かつてガザに入る物資の9割を占めていたというエジプト国境の地下トンネルが、シーシ政権によって破壊、閉鎖されているため、ガザの再建はイスラエルの支配下に入ったことになる。

 アブシャフラさんによると、2014年8月末の停戦後に、「住宅」として建設申請が出されたのは2242件で、イスラエルが認めたのは1569件だという。

 「イスラエルは拒否するわけではなく『検討中』として再建への同意を出さない。このペースでいけば、イスラエルの攻撃で損傷を受けた2万3000戸についてイスラエルの同意を得るのに10年以上かかる」という。

イスラム武装メンバーの家の再建が優先

 さらに、これまでにイスラエルが同意した1569件のうち、663件は、カタールが再建資金を支援する住宅だという。

 アブシャフラさんは「カタールが再建支援する住宅の中にはかなりハマスの軍事部門であるイッザディン・カッサーム軍団のメンバーの家が含まれている」と指摘する。

 カタール政府がエジプトのムスリム同胞団やガザのハマスを支援していることは周知の事実である。「イスラエルももちろん、そのことは知っている。しかし、ハマスとの間で、トルコを仲介して停戦などの交渉をしているので、アメとして再建を認めている。そこには政治的なかけひきが働いているのです」と語った。

家を破壊されコンテナ式仮設住宅に住む避難民=ガザ市北部のベイトハヌン拡大家を破壊されコンテナ式仮設住宅に住む避難民=ガザ市北部のベイトハヌン、撮影・筆者
 2014年7月から8月にかけての51日間の攻撃で死んだ2200人以上のパレスチナ人のうち、3分の2が民間人だった。「攻撃で多くの犠牲を払ったのは民間人で、住宅再建でわりを食うのも民間人ということになる」とアブシャフラさんは語った。

 アブシャフラさんが語ったことで、もう一つ重要なことがあった。 ・・・ログインして読む
(残り:約1252文字/本文:約2282文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、最新刊に『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)。

川上泰徳の記事

もっと見る