絶望に追いやられる住民
2015年09月10日
ガザ再建は進んでいないが、私が訪れた1カ月ほど前から、一部の更地で、ぽつぽつと新しい住宅の建設が始まっているのも目にした。自治政府を通じて再建が支援されている住宅だ。
再建について聞くために、都市開発コンサルタントのアリ・アブシャフラさん(69)と会った。
「建物の再建は、2014年8月の停戦後、住宅の一戸一戸についてもすべてイスラエルの同意が必要とされるようになった」という。
申請先はパレスチナ自治政府だが、イスラエルが同意しなければ建設資材を入れることができない。かつてガザに入る物資の9割を占めていたというエジプト国境の地下トンネルが、シーシ政権によって破壊、閉鎖されているため、ガザの再建はイスラエルの支配下に入ったことになる。
アブシャフラさんによると、2014年8月末の停戦後に、「住宅」として建設申請が出されたのは2242件で、イスラエルが認めたのは1569件だという。
「イスラエルは拒否するわけではなく『検討中』として再建への同意を出さない。このペースでいけば、イスラエルの攻撃で損傷を受けた2万3000戸についてイスラエルの同意を得るのに10年以上かかる」という。
さらに、これまでにイスラエルが同意した1569件のうち、663件は、カタールが再建資金を支援する住宅だという。
アブシャフラさんは「カタールが再建支援する住宅の中にはかなりハマスの軍事部門であるイッザディン・カッサーム軍団のメンバーの家が含まれている」と指摘する。
カタール政府がエジプトのムスリム同胞団やガザのハマスを支援していることは周知の事実である。「イスラエルももちろん、そのことは知っている。しかし、ハマスとの間で、トルコを仲介して停戦などの交渉をしているので、アメとして再建を認めている。そこには政治的なかけひきが働いているのです」と語った。
アブシャフラさんが語ったことで、もう一つ重要なことがあった。
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