政府答弁や閣議決定、国会の附帯決議が守られるよう監視すべきだ
2015年10月02日
前回書いたように、安保法制の内容には、憲法的にも法技術的にも政策論的にも大きな疑問が残る。そんな法案が無修正で成立したことは、国会による議論の形骸化として、与党の横暴として、強く非難されるべきだろう。
安保法制成立を立憲主義確立のチャンスに(上)――選挙や国会審議を通じての法改正が必須(WEBRONZA)
しかし他方で、今回の立法を「安全保障政策の大転換である」とか、「従来の立場を180度変更するものだ」と表現することには違和感がある。
法律の文言や答弁を詳細に検討する限りは、政権が期待しているほど、自衛隊を自由に動かすことができるようになるとは思えないのだ。
今回の安保法制は、公明党や内閣法制局が粘り腰を発揮したため、政府・与党内の協議でかなり抑制的な文言が採用されている。
国会での政府の答弁があまりにもひどかったため、法案は違憲との評価を免れないが、条文のみを厳密に解釈すれば、憲法に沿った形での運用も可能だったはずだ。
また、衆参両院の審議、最終段階の附帯決議・閣議決定でも様々な言質がとられた。
国民が、実際の安保法制や、国会での言質や附帯決議の内容を正確に把握していれば、政府が暴走したときに「約束が違うじゃないか」と反論し、政府の暴走を止めることができるだろう。「歴史的な大転換だ」という発言は、かえって政府を自由にする危険がある。
主権者たる国民は、冷静にしたたかに、政府の活動を監視し、政府を憲法と法律の文言で拘束していかねばならない。それが、立憲主義、法治主義、民主主義というものだ。
本稿では、今回の安保法制について、政府からどのような言質がとられているのか検討してみたい。
(1)国会での言質
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください