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安保法制成立を立憲主義確立のチャンスに(下)

政府答弁や閣議決定、国会の附帯決議が守られるよう監視すべきだ

木村草太 首都大学東京教授(憲法学)

2 安保法制成立の評価

 前回書いたように、安保法制の内容には、憲法的にも法技術的にも政策論的にも大きな疑問が残る。そんな法案が無修正で成立したことは、国会による議論の形骸化として、与党の横暴として、強く非難されるべきだろう。

 しかし他方で、今回の立法を「安全保障政策の大転換である」とか、「従来の立場を180度変更するものだ」と表現することには違和感がある。

賛否の声が交差した中心商店街での自衛隊パレード=13日、佐世保市 拡大自衛隊員の安全確保にとって、政府の国会答弁で獲得した「言質」が重要だ=2015年6月、佐世保市でのパレード
 確かに安保法制は成立したが、そこで成立したものが、本当にこれまでの政策を大きく転換させるようなものなのかは疑わしい。

 法律の文言や答弁を詳細に検討する限りは、政権が期待しているほど、自衛隊を自由に動かすことができるようになるとは思えないのだ。

 今回の安保法制は、公明党や内閣法制局が粘り腰を発揮したため、政府・与党内の協議でかなり抑制的な文言が採用されている。

 国会での政府の答弁があまりにもひどかったため、法案は違憲との評価を免れないが、条文のみを厳密に解釈すれば、憲法に沿った形での運用も可能だったはずだ。

 また、衆参両院の審議、最終段階の附帯決議・閣議決定でも様々な言質がとられた。

 国民が、実際の安保法制や、国会での言質や附帯決議の内容を正確に把握していれば、政府が暴走したときに「約束が違うじゃないか」と反論し、政府の暴走を止めることができるだろう。「歴史的な大転換だ」という発言は、かえって政府を自由にする危険がある。

 主権者たる国民は、冷静にしたたかに、政府の活動を監視し、政府を憲法と法律の文言で拘束していかねばならない。それが、立憲主義、法治主義、民主主義というものだ。

 本稿では、今回の安保法制について、政府からどのような言質がとられているのか検討してみたい。

(1)国会での言質

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筆者

木村草太

木村草太(きむら・そうた) 首都大学東京教授(憲法学)

1980年生まれ。東京大学法学部卒業後、同大学助手、首都大学東京准教授を経て現職。専門は憲法学。著書に『平等なき平等条項論』(東京大学出版会)、『憲法の急所』(羽鳥書店)、『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK新書)、『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書)、最新刊に『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)、共著に『未完の憲法』(潮出版社)、『憲法の条件――戦後70年から考える』(NHK出版新書)、『検証・安保法案――どこが憲法違反か』(有斐閣)など。趣味は音楽鑑賞と将棋観戦。棋譜並べの際には、菱湖書・竹風作の彫埋駒を使用。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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