伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
難民問題が世界的なイッシューだ。
韓国では一般家庭のほとんどがケーブル放送と契約しており、いつでも海外ニュースが視聴できる。このところBBCやCNNなどの海外放送では連日、「Europe's refugee,migrant crisis」(ヨーロッパの難民・移民危機)が最重要トピックスとなっている。
ところが、NHKや韓国KBSにチャンネルを変えると、さっと画面の風景が変わる。ああ、やはり東アジアは遠いのだと感じる。
9月、日韓のトップニュースを多く飾ったのは日本の「安保法案」だった。
韓国メディアでは法案に対して否定的な評価が目立ったが、政府に近い筋では歯切れが悪かった。
対北、対米、対中、そして対日という複雑な対外関係にあって、それぞれの観点から利点や心配を語ると、全体の整合性は失われる。韓国政府も大変だ。
ただ、ニュースが国会前の抗議行動を大きく報道してくれたのはよかった。
デモや集会がある日本の風景、それは健康的で美しい。
さて、本題は難民の話だ。すでに内外のメディアで報道されているように、日本は先進国の中では難民の受け入れが非常に少ない国と言われている。2014年に日本で難民申請した5000人のうち、正式に認定された人はわずか11人である。
「そんなに少ないとは……」と呆れる人もいれば、逆に「日本にも難民が来ているとは知らなかった」と驚く人もいる。
繰り返すが、今、難民問題の焦点となっている中東やアフリカは日本からとても遠く、身近な問題として考えにくいとはいえる。ただ、それでも現実には日本に保護を求めている人はいて、2014年はそのうち難民として認定された11人に加え、人道上の理由で特別滞在許可となった110人が暮らしているのである。
ところで、韓国はどうだろう?
韓国政府法務部によれば、2014年の難民申請者は2896人、そのうち認定者は94人となっている。日本の11人に比べたら多いし、さらに全体の申請者数から見た認定率も高い。また、人道上の理由で滞在を許可された人は539人にものぼっており、滞在を許可された「難民」の合計は633人、2014年に限れば日本の6倍である。
「韓国はなかなか頑張っているじゃないか」とも言えるかもしれない。
同じく中東やアフリカから遠い東アジアにあって、しかも日本より小さい国(人口は5000万、面積は九州と四国を合わせた大きさ)が、日本より多くの難民を受け入れている。
でも、これで韓国を褒めようという意図は私にはない。
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