伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
9月13日、ソウルにある国家人権委員会の前で、韓国在住の「シリア難民」と支援団体による“save Syria ,save refugees" キャンペーンが開かれた。メディアを通してその様子を見た人々の多くが驚いた。
「韓国にもシリア難民がいたのですね」
私自身も韓国の難民問題といえば、北朝鮮からのいわゆる「脱北者」などを想像するだけで、他の国の人々についてはほとんどイメージがなかった。
韓国随一のイケメン俳優(?)チョン・ウソンが親善大使を務めるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の活動も、もっぱら中東やアフリカ現地での支援活動に協賛を求めるものであり、国内の難民への言及はほとんどなかったように思う。
キャンペーンで訴えられていたのは、「シリア人のほとんどは正式な難民認定がされないため、家族に会えないし、医療保険にも入れず医者にもかかれない」等の内容だった。驚いたのは760人の申請中、正式認定者は3人のみ、一方で621人に人道的な理由で特別在留が認められているということだ。
「正式認定3人」は奇しくも日本と同じだが、私が意外だと思ったのは、その「少なさ」よりも、むしろ申請者の「多さ」だった。
日本での申請数は約60件と聞いた。韓国の方が日本より難民申請者は多く、さらに「人道的な理由」での在留許可件数も多い。これは、どういうことだろう?
まずは実際の数字を見たくて、韓国政府の公式統計にあたってみた。やはり、2014年末までで韓国内のシリア人は758人、うち560人に特別在留が認められている。韓国の法務局は毎年の年次報告をインターネット上に公開しており、それによれば政府の難民申請統計にシリア人が登場するのは2012年からで、その推移は次のようになる。
2012年 146人
2013年 295人
2014年 204人
つまり、韓国内でのシリア人の難民申請は内戦が本格化するとともに始まっており、それに対して韓国政府は人道的な対応を迫られたということになる。
ところで、この人たちはどこから来たのだろう。遠い東アジアまでわざわざ来たということは考えにくい。もともと韓国にいた人たちなのだろうか? だとしたら、どうして韓国には日本よりも多くのシリア人がいるのだろうか?
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