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国会を開かないのは違憲の「非常事態」だ

臨時国会召集要求は憲政回復の「狼煙火」になるか?

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

専制政権は国会を嫌う――国会開設要求と憲政擁護運動

 安倍首相は内閣改造を行ったが、次々と新大臣の醜聞や疑惑が報じられている。

 高木毅復興相は過去に女性の下着を盗んだとされ、森山裕農水相や馳浩文科相には寄付をめぐる問題が浮上し、島尻安伊子沖縄北方担当相は名前と顔写真が入った「カレンダー」を支援者に配布したというのである。

安倍改造内閣拡大「疑惑」が噴出する安倍改造内閣
 批判するのも嫌な低劣な問題すら報じられているように、政府を見る限り、日本は「美しい国」どころか品性下劣な国になってしまったと言わざるを得ない。

 このような内閣を作って平然としているのは、安保法を「成立」させた今、民意を気にせずに傍若無人な振る舞いをしてもいいと政権が考えているとしか思えない。

 TPPの大筋合意という報道がなされたので、国会で議論すべきテーマは山積している。それなのに臨時国会を開催しない方針を政権は打ち出した。安保法問題の再燃を避けたいからだろう。

 しかし、臨時国会は毎年、慣例としてしばしば2ヶ月くらい開催されており、その代わりとなる特別国会も含めて考えると現行憲法下で開催されなかったことはほとんどない。だからこれはきわめて異例の事態だ。

 そこで野党5党が憲法にもとづいて臨時国会の招集を要求した。

参院の中村剛事務総長(右から3人目)に臨時国会召集要求書を手渡す野党幹部ら2015102拡大参院の中村剛事務総長(右から3人目)に臨時国会召集要求書を手渡す野党幹部たち=2015年10月21日
 衆参いずれかの総議員の4分の1以上が要求すれば内閣は国会を招集しなければならないと憲法53条では定められている。

 ところが、衆議院の議員125人(定数475)、参議院の議員84人(定数242)が要求したにもかかわらず、国会を開催しない方針を政権は変えようとしていない。憲法に招集時期の規定がないから先延ばしすることができるというのである。

 これ自体がもちろん違憲であり、「非常事態」である。

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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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