3人のうち2人が失業状態
2015年10月27日
ガザでは若者の3人に2人が失業している。2007年にイスラム組織ハマスが支配した後、イスラエルの封鎖が始まり、さらに2013年にハマスと敵対する政権がエジプトにできて、ガザの経済を支えていた密輸トンネルの大半がつぶされた。
2014年夏のイスラエルによる50日間の攻撃で、人的・物的に大きな被害を受けたが、封鎖によって復興は全く進んでいない。若者たちはガザから脱出することだけを考えている。
国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)によると、ガザの失業率は、イスラエルによる大規模攻撃の後、43%に跳ね上がった。なかでも18歳から25歳の若者層の失業率は65%の高率となっている。
ガザで話を聞いた若者ムハンマド・ジャードさん(23)は2014年秋、大学を卒業したものの、仕事がない。「多くの会社を回ったが、特別のコネがなければ就職はできない」と語る。1歳年上で2年前に大学を卒業した兄も失業中だ。
ガザはイスラム組織ハマスに支配されて以来、実質的にハマスが行政を実施し、「ハマス政府」となっている。ハマス政府は道路清掃などの失業対策を実施しているが、対象は既婚者に限られ、7時間働いて、1日25シェケル(約800円)。「交通費と昼食で、使いきってしまう」とジャードさんは語る。
ガザは2007年以降、イスラエルの封鎖の下に置かれているため、ガザの物資の9割はエジプトとの間の密輸トンネルを通して入ってきていた。
しかし、2013年夏に、エジプトでハマスと友好関係にあったイスラム系政権が軍のクーデターで倒されて、密輸トンネルは破壊された。
さらに1年後のイスラエルによる大規模空爆で住宅9000戸が全壊するなど大きな被害が出たが、封鎖によって建設資材が入ってこない。空爆ではガザの多くの工場も破壊されて打撃を受けた。それが、若者の失業率の異常な高さとなっている。
さらにジャードさんが指摘したのは、パレスチナ自治政府の公務員募集が、2007年以降、停止していることだ。
自治政府への就職は、ヨルダン川西岸でもガザでも大きな割合を占める。ガザだけでも現在7万5000人の自治政府職員がいるが、8年間もガザで公務員の募集がないのは、イスラム組織ハマスが支配するガザと、ヨルダン川西岸を支配する自治政府との分裂に起因している。
現在のガザの自治政府職員7万5000人のうち、実際に働いているのは1万5000人。2007年時点で職員だった6万人は、ハマスがガザを支配した後、自治政府が「ハマスの下では働く必要はない」と指示し、給料だけを支給している。
ハマスは自前で1万5000人の職員を補充し、その分について独自に給料を払っている。自治政府はガザで新しい職員の募集はせず、ハマスも、公募ではなく、自分の組織から職員を補充している。
2007年以前は、自治政府の職員は、故アラファト議長、現アッバス議長が率いる政治組織ファタハの関係者が優先的に採用された。
ガザがハマス支配になって、かつての職員6万人は働かないまま自治政府から給料が支払われ、新たに採用された職員1万5000人は、ハマスの資金で養われたハマス関係者で占められている。パレスチナの政治的な対立が、若者たちの就職を狭める結果になっている。
もう一人の若者ムハンマド・ガザールさん(20)は専門学校を卒業した後、2年間、ほぼ失業状態だ。
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