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「ガザ脱出」現地報告(下)――繰り返される危険

逮捕、懲役、カネを騙し取る密航斡旋人……

川上泰徳 中東ジャーナリスト

イスラエルへの密行

 パレスチナ自治区ガザは、2007年以来、イスラエルによる封鎖が続き、3回の大規模攻撃を受けた。

 若者の失業率は65%に上り、多くの若者たちは「ガザ脱出」に望みを託す。

 ガザで脱出の試みを繰り返している若者ナギさん(23)と会った。名前は本名だが、身元を隠すために「家族名は出さない」という条件で、取材に応じた。

インタビューに応じたガザの脱出を繰り返す若者ナギ=ガザ市で拡大ガザの脱出を繰り返す若者ナギ=ガザ市、撮影・筆者
 ナギさんはガザ自治区中部のハンユニス出身で、ガザ市内のカフェの給仕として朝10時から夜中の12時まで一日14時間働いている。

 日給は15シェケル(約600円)。「家に戻っていたら日給は飛んでしまうので、カフェで寝泊まりしている」と語る。

 低い給料でも働いているのは、会社などで働こうとすれば、半年から1年間、「研修」と称して、無給で働かねばならない慣習があるためでもある。

 ナギさんは職業学校で裁縫を学び、18歳で修了した後、8カ月、職探しをしたが見つからなかった。

 イスラエルの封鎖前は、ガザには小規模の縫製工場が多くあり、イスラエルの衣料メーカーの下請けをしていた。しかし、封鎖によって、縫製工場の多くが閉鎖された。

 ナギさんはガザから脱出して、イスラエルに密行することを考えた。イスラエルには150万人のアラブ系市民(パレスチナ人)も住んでおり、潜り込んで働くこともできると考えた。

 そのために、ガザとイスラエルの境界につくられている金網のフェンスを越えて、友人たち4人とイスラエルに行く計画を立てた。「私たちは2日間、イスラエルの境界での軍のパトロールを見張って記録し、その間隙をぬってフェンスを越えることにした」という。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、最新刊に『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)。

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