伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
11月2日、韓国ソウルの大統領府では、日本のメディアがその開催を速報扱いするような重要なイベントが行われていた。3年半ぶりに行われた日韓首脳会談である。
朴大統領就任からは2年8ヶ月、安倍総理の就任からは2年10ヶ月、両者にとっての「初の首脳会談」にいたるまでの空白は、そのまま日韓関係の不具合を象徴するものであった。
日本では注目された初会談だが、韓国ではあまり話題にならなかった。
最近は日韓関係に関心のない人々が増えていることに加え、大統領外交に対していささか食傷気味というのもあるようだ。
「派手な外交パフォーマンスよりも内政が問題でしょう」という人は少なくなく、特にこの数日間は「歴史教科書国定化問題」が大詰めを迎えており、メディアも国民も関心はそちらに向いていた。
ところで同じ日、立法府である国会内の憲政会館では、もう一つの日韓の会合が開かれていた。
こちらは3年半の空白があった首脳会談とは違い、10年間にわたり緊密な関係を築き上げてきた定例会議である。主催は「アジア人権議員連盟」、「ピナンチョ(避難処)」「日本難民支援協会」「米国難民協議会」、テーマは「難民の受け入れと社会統合」(Reception and Integration of Refugees and Asylum-Seekers)、日韓両国のNGO関係者が中心になり、そこに米国を加えた形で、シンポジウムが行われていた。
とても熱気に満ちたシンポジウムだった。特に印象的だったのは、日韓両国とも報告者のほとんどが現場で活動する女性だったことと(米国から参加したサンディアゴ・カレン難民協会の代表も日本女性だった)、会場からの発言の多くが難民自身によるものだったことだ。
シンポジウムは現場のリアルを共有して進行され、それこそが会議の重要性を物語っていた。
たとえば韓国に居住する難民たちは、隣国・日本の状況について、とても知りたがっていた。
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