坂本達哉(さかもと・たつや) 慶應義塾大学経済学部教授
1955年東京生まれ。現在、慶應義塾大学経済学部教授。博士(経済学)。主要著作に『ヒュームの文明社会』(創文社、1995年)、『ヒューム希望の懐疑主義』(慶應義塾大学出版会、2011年)、『社会思想の歴史』(名古屋大学出版会、2014年)がある。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
「ニュー・レイバー」を超える、新しい社会民主主義の姿
「格差」とはまずは「経済的不平等」のことである。マルクスの古典的資本主義観では、経済的不平等は資本家による労働者の「搾取」(剰余労働の無償取得)の帰結であり、すなわち階級問題だった。
したがって、その最終的解決は、この階級搾取の構造それ自体を廃棄すること(社会主義革命)であった。
ところが、マルクス以降の資本主義の変化によって、この展望は根拠を失う。
国家は労働者の利益を図る社会政策を開始し、政治家は、党派の別なく、労働者階級の利益を公約として掲げ始める。
こうして第二次世界大戦後、労働党アトリー内閣の下で「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家が実現した。
しかし、ブレア以前の労働党では、格差や不平等の問題は、基本的に、資本対労働の階級対立の問題とされていた。
ブレアはサッチャー流の新自由主義的政策によってこれを変えようとしたが、規制緩和と自由競争という処方箋は、結局のところ、イギリス社会の格差を拡大させる結果となった。
コービン党首の出現に、旧労働党への回帰というのではない、何か積極的な意味があるとすれば、それは、
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