2016年02月18日
*川上泰徳さん×津田大介さん、『中東の現場を歩く』刊行記念イベントのご案内
2009年10月からエジプト第2の都市アレクサンドリアに拠点をおいて、中東駐在の編集委員になった。
その第1弾として取材したのがイラクのシーア派の聖地ナジャフだった。ナジャフがシーア派の聖地とみなされるのは、シーア派の祖ともいえるアリの聖廟があるからだ。
しかし、アリは暗殺され、その後でカリフ位を継いだメッカの名家ムアウィヤに対して、預言者の血を引くアリの血統を正統とし、アリの息子や孫を後継者としてシーア派がつくられたのである。
ナジャフは1970年代までシーア派宗教研究の中心として栄え、イランやペルシャ湾岸のアラブ諸国、レバノンなどのシーア派地域から聖地訪問の信者や留学生を集めていた。
しかし、旧フセイン政権によってシーア派宗教勢力は抑圧され、特に1980年にイラン・イラク戦争が始まってからは、イランと通じる勢力とみなされて弾圧が激化し、多くの宗教指導者がイランの宗教都市コムに移り、シーア派教学の中心もコムになった。
ところがイラク戦争後のイラクで、選挙によってシーア派主導の政権が生まれてから、ナジャフはシーア派の本拠として急速に影響力を取り戻した。
2008年にナジャフ国際空港が開業し、イラン、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、レバノン、シリアとの定期便が次々と開通した。
私は、勢いに乗っているナジャフを見てみたいと思った。2006年春に始まったスンニ派とシーア派の抗争はまだ尾を引いていたが、ナジャフの治安はかなり改善しているだろうと考えた。
私はバーレーンの首都マナマからナジャフ行きのガルフ・エアーに乗った。飛行機がナジャフ国際空港に着陸した瞬間、乗客の一人が甲高く叫んだ。
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