画期的な決断を未来に生かすために
2016年01月07日
2015年11月に3年半ぶりの日韓首脳会談が行われた際、年内の従軍慰安婦問題の妥結について、首脳同士の話し合いが進んだと伝えられた。
そうした中で、12月28日にソウルの韓国・外交部(外務省に当たる)にて岸田文雄外務大臣と尹炳世外交部長官との会談は行われたのである。
その会談において決定されたのは、(1)慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した点、(2)安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明する点、(3)元慰安婦を支援する財団を韓国政府が設立し、そこに日本政府が10億円を拠出し、同基金が両政府により運営される点、(4)日本大使館前の少女像の移転に対して韓国政府が努力する点であった。
そして、両外相がそれらを表明した後、電話による首脳会談も13分ほど行われた。
その当日のうちに安倍首相も、朴槿恵大統領も国民に向けてメッセージを発した事実によって、これが首脳同士の合意でもあることが明確になった。また、そうした対応を受けて、日韓両国だけでなく、アメリカをはじめ世界各国で合意を高く評価する論調が伝えられた。
そして、何より重要なのは、日韓両国のメディアが合意を肯定的に捉えていたことである。これまで本サイトで度々述べてきたように、両首脳は一部の目立った主張を重視し、世論の多数派の意見を十分にくみ取って来なかったものの、今回の行動で、どちらが広い支持を得るかを実感したことは間違いない。
慰安婦問題で日韓がとるべき方針について、私は近著『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』にて「両国が『自らの希望と限界を明示すること』、および『国内の調整を行うこと』という2点を実行しなければ、これまでと同じ事態が繰り返されてしまう」(同書99ページ)と述べたが、両首脳は時間を要する国内調整を後回しにし、実行可能な方針を打ち出した。
そうした状況を受けて、本稿では今回の決定に対する評価や、今後の展望、及び指導者にとって何が必要とされているのかを明らかにしていく。
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