伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
またしても日本に負けてしまった
いわゆる「従軍慰安婦問題」をめぐる合意は「晴天の霹靂」だった。
「その10日前でも、こういう展開になるとは思わなかった」。日本の大手紙の記者がツイッターでつぶやくのを見て、外交とはよく練られた物語というわけでもないのだなと思った。
もっとも、直前になって朝日新聞が連日トップで日韓会談をとりあげているのには違和感があり、何か予想外のことが起きるのかもしれないとは思った。それが、まさかの「最終解決」(「この問題が最終的かつ不可逆的に解決される」日韓両外相共同記者発表)。驚いた。
そもそも慰安婦問題は政府間ではなく、日本政府と当事者の間で「解決」されるものと思っていた。日本政府はすでに日韓条約で法的に「決着済み」という立場だし、また南北分断状況の中で韓国政府が朝鮮半島全体の被害者を代表できるわけでもない。政府間で新しく合意できることなどないと思っていた。
ところが両国政府は「慰安婦問題で合意」した。
私を含め日韓関係の中で仕事をする日本人は、「韓国側がよくこの条件で合意したもんだ」と、まずは驚いた。
とくに「賠償でなく財団への拠出金」という形での「最終的解決」は、これまでの韓国側の主張からすれば、単純な譲歩とは言えないものだった。
果たして、これで国民を説得できるのだろうか?
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