「合意」は両側から崩れてしまうのか?
2016年01月13日
連載(上)を読んでいただいた複数の方から、「日本に負けた」という表現には驚いたという感想をいただいた。
慰安婦問題合意――韓国人はどう思ったか?(上)――またしても日本に負けてしまった(WEBRONZA)
たしかに、加害者と被害者という関係なら「勝ち負け」という問題の立て方よりも、「反省」や「謝罪」が十分に相手に伝わったのかが重要だ。
その意味では、今回の「合意」は当事者である「元慰安婦女性」たちに、加害者側の反省が十分に伝わったとは思えない。
つまりその点では、日本政府の行為はまだ成果を生んでいない。むしろ、当事者の気持ちをさらに傷つけたかもしれない。
前回、「蒸し返す」という言葉の問題について指摘したが、民放やネット上ではさらにひどい発言が出ている。
岸田文雄外相は合意文書の中で「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこと」を明言したにもかかわらず、その後ろからは「元慰安婦の名誉と尊厳を傷つける発言」ばかりが聞こえてくる。
日本政府が供出する10億円は、むしろ日本国内のメディアや個人に対する人権教育のために使われるべきかもしれない、と個人的には思う。
しかし、外交は外交である。「日本に負けた」という韓国人の多くも、日韓関係を加害者vs被害者というよりは、独立国家vs独立国家という対等な関係で考えている。
「そもそも韓国政府が、慰安婦問題を日韓首脳会談の条件としたことが間違いだった」
これは「被害者を利用するな」という意見とは少し違っている。
「国として首脳会談が必要になっても、政府は慰安婦問題を棚上げすることができない。自らに足かせを作ってしまった。他の案件を進めるためには、まずこちらを解決しなければならない。政府は自分から退路を断ってしまったんです」
こうした意見は40~50代の男性エリート層に多かった。この10年間、韓国の国際的地位を引き上げるため、現場で奮闘した人々だ。
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