メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

16年、シリア内戦と「イスラム国」の行方(下)

悲劇の陰で肥大するISに米欧はどう対処する?

川上泰徳 中東ジャーナリスト

IS空爆に全力、内戦の悲劇は二の次

 「イスラム国(IS)」の問題はシリア内戦の一部ではあるが、欧米や日本にとっては、IS絡みで起こるテロが大きな関心事である。

 今年も1月7日、リビア東部の警察訓練センターに爆弾を積んだトラックが突っ込み65人が死んだテロ事件で、ISが犯行声明を出した。

 欧米は、2015年11月のパリ同時多発テロ事件の後、新たなテロ発生が起こるのではないかと戦々恐々としている。

 世界の関心はシリア停戦やシリア和平の行方よりも、ISに注がれている。

過激派組織「イスラム国」(IS)の旗を掲げてパレードするイスラム戦闘員=ロイター過激派組織「イスラム国」(IS)の旗を掲げてパレードするイスラム戦闘員=ロイター
 その結果、米欧はIS空爆に全力を挙げているが、4年半で25万人が死に、420万人以上の難民が出ているシリア内戦の悲劇への対応は二の次になっている。

 この原稿の(上)で書いたように、2015年の反体制派地域で、民間人の死者1万6425人のうち、その8割の死者は、政権軍の空爆や砲撃などの攻撃と、ロシア軍の空爆によるものであり、ISによる死者は9%に過ぎない。

 それにもかかわらず、欧米はアサド政権やロシア軍の攻撃を止めようと真剣になっているようには見えない。

争いの陰で肥大化してきたIS

 ISはイラク戦争以来、争いの陰で肥大してきた。それも戦争で痛めつけられるスンニ派の怒りを吸収するように大きくなってきた。

・・・ログインして読む
(残り:約3822文字/本文:約4437文字)