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慰安婦問題合意――韓国人はどう思ったか?(下)

若者たちの異議申し立てと大人たちのリアル

伊東順子 フリーライター・翻訳業

在韓日本人の日常

 前回も指摘したが、日韓で何か問題が起きた際の反応は、今や日本の方が「熱い」。

 日本で過ごした年末も、テレビのワイドショー、ニュース番組、新聞、地下鉄の吊り広告、インターネットメディアのいたるところに「韓国」があふれ、仕事やプライベートで会う人々からも「韓国、大丈夫?」のようなことを聞かれた。

 さらに、「以前は韓国旅行も楽しかったけど、今は行きたくない。(韓国人は)日本人のことみんな嫌っているし」。あるいはこんなことも。

慰安婦少女像慰安婦少女像=撮影・筆者
 「韓国の人はなんでいつもあんなに怒ってばかりいるんですか?」

 そんなわけないでしょう。

 笑いもするし泣きもするし、というか大部分の人々は日々、寡黙に仕事をしている。知人、友人の言葉に、今、日本のメディアが描く「韓国の姿」がわかる気がした。

 では、実際の韓国はどうなのか。

 年初から今日まで釜山とソウルにいながら、多くの韓国人に会った。

 仕事関係者、友人知人、ご近所さん、あるいはタクシーの運転手など見知らぬ他人を含め、私個人に限れば「従軍慰安婦問題」の話をふってきた人はただの1人もいなかった。

 こちらから聞いた場合も、「まあその話はね……」と、にこやかに話題を変える人がほとんどだった。

 もちろん、過去にはそうじゃない人々にも会ってきた。

 特に90年代初めの留学生だった頃は、「日本人を教育してやる」と下宿に酒をもって訪ねてくる「愛国者」もいたし、タクシーの運転手さんに説教されたこともある。

 日本人だけじゃない。米国人の留学生仲間も「米帝国主義打倒」とビヤホールで一気飲み競争を迫られたりもした。

 潮目が変わったのは韓国がアジア金融危機から立ち直った2000年代半ばである。それをまとめて『もう日本を気にしなくなった韓国人』(2007年)という表題の本も書き、その第一章を「逆転する日韓のナショナリズム」とした。
(ちなみに、私はこの本の中で、「今や韓国人にとって日本は今や憧れのリゾート地」と書いた。あれから8年、訪日韓国人は年間400万人、韓流ブーム時の訪韓日本人300万人をはるかに超えた)

静かな大人と、若者たちの怒り

 ただ、今回は在韓日本人の友人たちに、あえて同僚や家族、あるいは恋人などの「日韓合意に対する反応」を聞いてみた。既存のメディアにはとりあげられにくい、一般の人々の声だ。

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