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神社が改憲運動をしていいのか(下)

追求すべき「公共神道」への道

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

政治的動向と神道の宗教思想との関係は?

 たとえば現政権の進める政策を例として考えてみよう。

 原発再稼働は大きな理由として経済的に有益だという発想のもとに進められている。ところが反対派は「もし原発事故が起こってしまったら自然や環境が取り返しのつかないほど傷つけられ、人々の命や健康が損なわれる」と心配している。

熱田神宮 /鎮守の森拡大名古屋市・熱田神宮の参道。鎮守の森のような自然と神道は不可分の関係にある
 神道はもともと自然崇拝から始まっているから自然を尊重している。

 神社本庁のサイトでも神道の理念について「鎮守の森に代表される自然を守り、自然と人間がともに生きてゆくこと」を挙げている。

 それでは自然汚染という危惧に対して神道はどのように考えるのだろうか。

 安全保障に有益だという理由のもとで安保法が「制定」されて集団的自衛権が行使可能になった。

 神道は民族宗教だから、「他国から攻められた時に反撃して国土を防衛することは宗教的に正しいし必要だ」と主張しても不思議はないような気がする。

 しかし自国が攻められた場合とは違って、集団的自衛権は日本という国家は攻撃されていないのにかかわらず、他国が攻められた時に日本が攻撃することを可能にする。神道の考え方ではこれも正しいのだろうか。

 またTPPは

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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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