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 2011年2月1日、編集委員として駐在していたエジプトのアレクサンドリアから、連日デモが続いていたカイロに移った。

 早速、その日の午後、中心部のタハリール広場に行ったが、その雰囲気はまるで解放区のようだった。お祭り気分といってもよかった。人々は「ムバラク、去れ」と声を張り上げていた。

 その時、これはどこかで見たというデジャブの思いにとらわれた。それはイラク戦争の後に、「キファーヤ(もう、たくさんだ)運動」の活動家たちがイラク国民議会の前で、治安部隊に囲まれながら叫んでいた光景であった。その時はせいぜい100人程度の人数だったが、それから7年が経過したいま、エジプトでは人々がタハリール広場を埋めつくしている。

ムバラク支持者の異様な興奮

 平和な空気が一転したのは翌2日だった。昼前に車でカイロ市内を回ってみると、タハリール広場の周りのあちこちでムバラク支持を唱えるデモが始まっていた。

 ムバラク支持派のデモを見たのは反対派のデモが始まって初めてだった。それぞれ100人ほどの規模で、トラックに乗ったグループもあれば行進しているグループもあった。

 タブラと呼ばれる筒状のドラムやタンバリンを持った男たちもいた。それはムバラク体制下の選挙で、与党の国民民主党に雇われて選挙運動をするグループと雰囲気がそっくりだった。

 富裕層の中にムバラク支持派がいることは確かだが、町に繰り出している者たちは、富裕層そのものではなく、富裕層から金で雇われた者たちであることは一目瞭然だった。

 私はカイロのダウンタウンの繁華街で、ムバラク支持者たちの一団と会った。その一人の中年女性に「なぜ、ムバラクを支持しているのか」と質問した。

 女性は声を張り上げて ・・・ログインして読む
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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、最新刊に『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)。

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