メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

 事件の現場では、常に多くの疑問に出合う。その疑問を解く鍵もまた、現場にある。

 現場に行ったジャーナリストは、事件がなぜ、起こったのか、どのような人々が主人公だったのかなど、様々な疑問を持つ。ジャーナリスト自身の問題意識や理解の深さ、記述の力点の置き方によって、同じ出来事でも様々な書き方が可能であり、時には全く別のストーリーになったり意味づけされたりする。

エジプト革命の後、反政府デモを主導した若者組織が集まった革命委員会ができて、毎日会合が開かれた=2011年3月、カイロで拡大エジプト革命の後、反政府デモを主導した若者組織が集まった革命委員会で連日会合が開かれた=2011年3月、カイロで 撮影・筆者
 私はエジプトの若者たちがデモを始めて、ムバラク退陣が発表されるまでずっと現場を見ていたが、見えているのは表面の動きだけだった。

 革命の背後にどのような動きがあったのか、その後の検証作業で多くのことが分かった。

秘密の会合

 私は1月25日のデモを呼びかけた若者リーダーたちに話を聞いた。

・・・ログインして読む
(残り:約4620文字/本文:約4947文字)


筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

川上泰徳の記事

もっと見る