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安田純平さんを救出するために(中) 米国の転換

家族の身代金支払いを認める

川上泰徳 中東ジャーナリスト

 昨年(2015年)6月以来シリアで行方不明になっているフリーのジャーナリスト安田純平さんと見られる動画がインターネットに掲載されたことで、今後、安田さんの解放問題が日本政府にとっての課題となる。

 まず、日本が「テロとの戦い」で歩調を合わせる米国の対応を確認しておく必要がある。

 オバマ米大統領は2015年6月、テロ組織などによって米国人が誘拐され、人質になった事件についての政府の新たな対応策を発表した。これは「大統領政策指令(presidential policy directive)」として新政策を示し、さらに「大統領令(executive order)」として政府の新たな人事や機構の創設を命じたものだ。

 米国の新政策は「人質の安全と無事に帰還させることを最優先」として、人質の家族が人質解放のために身代金を支払うことを認め、家族を支援するために政府がテロ組織と連絡をとるという内容である。

 オバマ大統領は記者発表で「私は人質事件の対応策の全面的な見直しを命じた」として、次のように述べた。

 <世界はISIL(「イスラム国」)による、米国人を含む無実の人質の野蛮な殺害に慄いている。それ以上に人質の家族は、自分たちの政府とのやりとりでしばしば不満やいらだちを語っており、私に直接話した家族もある。異なる部局や機関が、いかに調整されていないか、政府による家族の支援が、いかに混乱しており、矛盾した情報がでているか、家族らがいかに政府の官僚主義によってたびたび途方にくれているか。あるケースでは、家族が愛する人を取り戻すための、ある方法を探っていることについて(政府から)脅かされたということもあった>

 <このようなことは全く受け入れられない。私が数家族と会い、彼らの話を聞いたのも、彼らが家族を取り戻す試みが完全に支援されていると確信させるためであり、それは私の厳粛な義務であった。誠実に、絶え間ない努力をしている政府と家族が一致しているのは、家族が愛する人を取り戻すことが、唯一の優先事項だということである>

 <人質の家族はすでに十分に苦痛を受けており、彼らが自分たちの政府に無視されているとか、政府の犠牲になっていると感じるようなことがあっては決してならない。昨年(2014年)、ISILによって息子のジム(ジェームズ)を殺された母親ダイアン・フォーリーは「米国人として、私たちはもっとうまくできた」と語った。私は全く同感である。私たちはもっとうまくやらねばならない。だから、私は人質事件の対応策の全面的な見直しを命じた>

かつては政府から家族への「脅し」も

亡くなった米国人ジャーナリストのジェームス・フォーリーさんについて話す、母親のダイアン・フォーリーさん拡大人質として亡くなった米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーさんの母親ダイアンさん
 ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏は2014年8月、ISIL支配地のシリア北部ラッカにおいて斬首され殺害された。

 母親のダイアン・フォーリーさんは ・・・ログインして読む
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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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