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「民進党」考

~ 新党名に見る日本政治 ~

成田憲彦 駿河台大学法学部教授(政治学)

 民主党と維新の党の合併による新党が発足した。注目の党名は、「民進党」になった。綱領より先に党名が決まったことを、政策の議論が先にあってしかるべきだったという声もあり、またマスコミの調査で「期待する」とする意見が伸びないなか、4月の衆議院の補選や7月の参議院選挙でどれだけ国民の支持が得られるか注目される。

新党の名称めぐり、両党の利害打算がオーバーラップ

 今回の両党の合併劇で最も興味深かったのは、新党の名称をめぐる駆け引きである。名は体を表すの言葉通り、もともと政党の名称にその発足にあたっての政治が映し込まれるのは当然だが、今回はそれがかつてないほどに端的に行われた。

 民主党は新党も「民主党」であることを望んだが、それは同党にとって維新の党の吸収合併がベスト・シナリオだったからである。吸収合併は、非自民の乱立が自民を利している状況の解消と、民主党の野党第一党の地位の強化につながる。しかし維新の党からすれば、吸収合併では「第三極」の旗を掲げてきたこれまでの路線と存在意義の否定になるから、受け入れられない。特に同党に多くいる民主党離党組にとっては、離党が誤りだったとされかねない。

民進党・成田原稿につく写真拡大書体が決まった「民進党」のパネルを掲げる赤松広隆・民主党最高顧問(右から2人目)や江田憲司・維新の党前代表(左から2人目)ら=3月22日、国会内
 こんな両党の利害打算に、民主党という政党と2009年からの民主党政権の評価が加わることによって、党名問題は大きく近年の日本政治の基本的理解に関わる問題に発展する。

 一方には「民主党」という名は失敗を意味し、国民の支持が見込めないから、捨てるべきだという主張がある。他方にはうたかたのごとく新党が生まれては消えていく最近の政治の中で、民主党は一定期間存続して政権にまでたどり着いた政党であり、まがりなりにも政権運営の経験は次につながる財産でもあるから、民主党の名は大切にすべきだという主張がある。党名問題は結局そんな基本認識と、前述の両党の利害打算がオーバーラップし、いかにも政治らしく議論の整理がされないままにうやむやのうちに進んだ。

問題の決着は公募とアンケートで

 周知のとおり党名問題の決着は、筆者も例を知らない公募とアンケートによって行われた。他陣営やこの合併劇を冷ややかに見る人々からは、自分たちがどういう政党をつくるかの熱い思いや覚悟の欠如だとして、嘲笑を浴びることになった。その批判は当たっていないわけではなく、確かにこの合併には胸躍るものが欠けていたと言っても間違いではないだろう。しかしどんな奇想天外な手を使っても、前に進むのが政治であり、その借りは新党の実績で返していくしかない。

 公募で最も多かった党名は「民主党」の継続だったが、両党間で新党の名称は新しいものとすることを合意していたことから(この合意を民主党側の戦術ミスとする向きもある)、これは対象外となり、民主党は「立憲民主党」、維新の党は「民進党」を選んで、それぞれがネットで支持を調査し双方とも民進党が多かったことから事態は決着した。

 民主党が立憲民主党を選んだのは、

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筆者

成田憲彦

成田憲彦(なりた・のりひこ) 駿河台大学法学部教授(政治学)

1946年生まれ。東京大学法学部卒業。国会図書館調査及び立法考査局政治議会課長を経て、細川内閣総理大臣政務秘書官となり、その後駿河台大学法学部教授、同学法学部長、副学長、学長を経て現職。この間野田内閣で内閣官房参与を務める。専攻は比較政治、現代日本政治分析。著書に『日本政治は甦るか』(共著 NHK出版)、『この政治空白の時代―橋本、小渕、森そして小泉政権』(共著 木鐸社)、『21世紀デモクラシーの課題―意思決定構造の比較分析』(共著 吉田書店)、『官邸』上下(講談社)など。