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「左翼」の共産党を「極左」に見せる印象操作

共産党は破壊活動を行う政党なのか?

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

「共産党は破防法の調査対象団体」という閣議決定

 政府は鈴木貴子衆議院議員(無所属)の質問趣意書に答えて、政府は共産党を「警察庁としては『暴力革命の方針』に変化はないと認識している」という答弁書を閣議決定した(3月22日)。共産党は今でも破壊活動防止法の調査対象団体であり、「共産党が(合法化した)1945年以降、国内で暴力主義的破壊活動を行った疑いがある」と記したという。

共産党の新ポスターをお披露目する山下芳生書記局長=16日午後4時、国会内20160316拡大政府から「暴力革命の方針に変化はない」とされた共産党=写真右は山下芳生書記局長(当時)、2016年3月
 当然ながら、共産党はこれに対して強く反発した。

 鈴木氏は「共産党との共闘」を批判して民主党を離党したから、共産党幹部は「野党共闘にくさびを打つ狙いが見え透いている」と語ったという(毎日新聞、3月22日付)。

 共産党は安保法の「成立」後に国民連合政権構想を打ち出し、基本的にはほとんどの選挙区に候補者を出すというこれまでの方針を大転換した。

 民主党(民進党)がこの構想に賛成しなかったにもかかわらず、参議院選挙について自主的に様々な選挙区で独自候補を取り下げ、各地で野党共闘を成立させつつある。すでに学生団体「SEALDs(シールズ)」などからなる「市民連合」などの応援によって32の一人区の半分(16選挙区)で野党共闘候補が成立している(4月6日現在)。

立憲主義という大義のための自己犠牲的戦略?

 これはもちろん、議会政治の中の正当な戦略だ。このような画期的方針を取るのは、危機にある立憲主義を守るためだ、と共産党は説明している。これまで共産党は自党の議席や得票のために実際に当選可能性はなくとも候補者を立て、大局から見れば党利党略だと批判されることもあった。

 筆者自身も、第1次安倍政権の時には「平和への結集」という概念のもとで平和のための統一候補を実現するように主張し、当時の「護憲政党」に対してそのような批判を行った。だから逆に今の共産党の方針は、自党だけの利益よりも立憲主義や民主主義の擁護という大義を優先しているように見える。

 その意味ではこれは、こうした大義のための自己犠牲的な戦略にすら見える。民主主義や立憲主義の観点からはこの歴史的大転換を賞賛することはあっても、これを批判することは難しい。

 そのため、理性的に政治的現実を見れば、今の共産党が「破壊活動」を行って虎視眈々と「暴力革命」を狙っているなどと想像することはできないし、そんなことを言ったら妄想だと一蹴されるだろう。

ネガティブ・キャンペーン?

 多くの平和志向の市民たちが安保法「成立」の後で野党共闘の成立を願ったにもかかわらず、民主党―民進党は共産党との連携に消極的で、支持率も上がらなかったから、共産党が「他の野党が国民連合政権構想に同意しないなら独自候補を擁立する」というスタンスをとれば、幅広い野党共闘は実現せず、参院選(ないし衆参同日選)は与党が大勝することになっただろう。

 ところが、驚いたことに共産党は自主的に独自候補擁立を止めて野党統一候補の実現に努めたので、参院一人区でも野党統一候補が勝利する可能性が生じてきた。

 自民党はこれに警戒感を強めており、この時期にあえてこのような異例の閣議決定を行ったのは、共産党に対するネガティブ・キャンペーンの一環だろうとも言われている。

 現に自民党は参院選向けに「『野党統一候補』=『民共合作候補』」というビラを作成し、「『自公の安定政権』か、『民共合作の革命勢力』かの選択」と位置づけているという(朝日新聞、3月10日付)。

 政党や政治家がネガティブ・キャンペーンを行うことは建設的な議論を妨げ、それ自体が民主主義の質を落とすことになるから、慎むべきことである。アメリカ大統領選などでも候補者に余裕がある時にはネガティブ・キャンペーンをせず、品位ある選挙戦を行おうとする。

 けれども勝利が難しくなってくるとライバルを蹴落とそうとしてそれを行い、物議を醸すことがある。だから自民党がネガティブ・キャンペーンを行うのなら、自民党自身の品位を失墜させることになるだろう。

メディア威嚇と政党威嚇

 もっとも、この閣議決定を選挙戦の一環とだけ見るのは間違っている。このように見てしまうと、「よくあること」と思われて片付けられかねないからである。

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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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