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[2]NLDとジャーナリスト、民主化の主役たち

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 半世紀にわたる軍政が終わるというのに市民が平静なミャンマーで、ひときわあわただしく興奮に包まれていたのが、新政権を担う国民民主連盟(NLD)の本部だった。

 「え? ここが……」と思うほど質素だ。2階建てで、通りに面した1階は一見、小さな雑貨屋風のたたずまいである。

 今や一国の政権を担う党とはいえ、つい最近までは、政府からにらまれる反政府派の人々のたまり場にすぎなかった。

 入り口近くに党のバッジや党旗などを売るガラスケースが置いてある。奥にはテーブルがありプラスチックの椅子がいくつか、ぶっきらぼうに置いてある。

拍手するNLD集会の参加者たち拍手するNLD集会の参加者たち=ヤンゴンのNLD新本部で 撮影・筆者
 政党のオフィスとわかるのは、壁の展示だ。

 アウンサンスーチーさんや父親のオウンサン将軍の特大の肖像写真が貼ってある。

 スーチーさんの写真の周囲を、赤地に白い星と黄色い「闘うクジャク」の党のシンボルマークのシールが取り巻く。

 そのまま隣の新築中の建物に入るよう促された。

 新しい本部を建設していてまだ内装工事の途中なのだが、すでに使っている。

 人々に押されるようにして階段を上がると、4階は薄いオレンジ色の伝統服を着た100人近い党員で埋まっていた。

 正面にはNLDの党旗を背に、最高顧問のティンウー氏ら幹部5人が並ぶ。各国の外交官が前列を陣取る。私は押し出されるようにして2列目に座った。目の前に中国大使館から贈られた花束が飾ってある。

軍にクギを刺す

 この日は国軍記念日で、それを記念する集会がこれから開かれる。民主主義の党であるNLDが国軍の記念日を祝うのには理由がある。

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