21年間、災害にかかわってきた弁護士としての経験から直言する
2016年04月29日
例えば、大規模災害時に、国会閉会中、衆議院の解散中で臨時国会も参議院の緊急集会も請求できない時、一時的に内閣に立法権が移転する。内閣は物資の配給、物の最高価格、支払い猶予等の4つの項目に限り政令を制定でき、これには罰則も付けられる(災害対策基本法109条の2)。これを「緊急政令」という。そして、直ちに国会を召集して同意がないときは、政令は効力を失うのである。
これに対しては、東日本大震災の時に民主党は「緊急政令」を発動しなかったので、この法律は役に立たないから憲法を改正すべきであると主張する憲法学者がいる。
しかし、前記の通り、緊急政令は、国会閉会や衆議院解散で、臨時国会や参議院の緊急集会が請求出来ないことを要件としている。東日本大震災の時は国会の会期中なので要件に該当せず、この制度が適用できないのは当然である。原則どおり国会が法律を作るべきことであって、憲法学者であれば当然知っていなければならないことである。
また、大規模災害時には、法律の制度として、内閣総理大臣に自治体や省庁に対する指示権が認められ、防衛大臣の自衛隊派遣の権限や、警察庁長官の警察統括権も総理大臣に集中する(大規模地震対策特別措置法13条、警察法72条)。
さらに、大幅な人権制限がなされている。
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