沓掛沙弥香(くつかけ・さやか) 大阪大学言語文化研究科博士後期課程
大阪大学言語文化研究科博士後期課程。大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム所属。1988年生まれ、大分県出身。大阪大学外国語学部スワヒリ語専攻卒。専門は社会言語学、アフリカ地域研究。タンザニアでのフィールド調査も行う。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
アフリカ蔑視と日本社会への幻想
非政府組織「国境なき記者団」(本部パリ)が発表した「世界 報道の自由度ランキング」について、Twitterなどのネット空間で「日本の報道の自由度がタンザニアより下!」と話題になっている。
ここでは、アフリカ諸国の1つであるタンザニアが、当然のように劣位の記号として消費されている。このような状況は、アフリカ蔑視として問題であるばかりか、私たちが日本の状況を正しく捉えることをも阻害しているのではないだろうか?
「日本の報道の自由度がタンザニアより下」。4月下旬、TwitterやFacebookでこのような投稿を目にするようになった。沖縄タイムスの記事や「JAPAN SUBCULTURE RESEARCH CENTER」というウェブサイトの記事が、ソースとして挙げられている。情報源をさかのぼると、米紙ロサンゼルス・タイムス(以下、LAタイムス)の記事にたどり着いた。
「なぜ日本の報道の自由度がタンザニアよりも低くなったのか」。4月20日付のLAタイムスには、こんな見出しが躍っていた。
この東京発の特派員記事は、2016年版の「世界 報道の自由度ランキング」で日本が昨年の61位よりも後退して72位となったことについて、日本の政治状況への解説を加えながら報じている。この見出しが日本の一部の地方紙やインターネット・サイトでそのまま取り上げられ、反響を呼んだようだ。
とは言っても、この騒ぎ自体は決して規模の大きなものではなく、今も知らない人の方が多いだろう。それでも、なぜあえてこの騒ぎを取り上げるのかというと、そこに見られる「アフリカ蔑視」に、どうしても引っかかりを感じるからだ。
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