藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト
元朝日新聞記者。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「台湾は中国ではなく台湾」という民意と両岸関係
台湾の総統に5月20日、民進党の蔡英文氏が就任した。当時国民党だった李登輝氏が1996年に初の直接選挙で当選してから、民進党の陳水扁氏、そして国民党の馬英九氏が総統を務めてきた。
国民党→民進党→国民党→民進党と、政権交代が平和的に続いたのは、台湾で民主主義が着実に根付いていることの表れだ。
一方で、世界が注目するのは、蔡政権になって、台湾海峡両岸関係がどうなるかだ。
中国が台湾に向けて弾道ミサイル演習をしたり、米国が空母を派遣したりと、緊迫したこともある両岸関係が安定したのは、馬政権になってからのことだ。
湖南省出身の父を持つ馬英九氏は香港で生まれ、台湾で育った。
「新台湾人」を名乗ったこともあったが、中国人としての意識は強く、若いころには、台湾で「釣魚台」と呼ばれる尖閣諸島を取り戻そうという「保釣」運動に深く関わった。
総統になってからも「釣魚台は日本が盗んだもの」と発言するなど、民族意識の強さは変わらなかった。
だから、日本では馬氏を「反日」と見る人が少なくない。筆者は李、陳、馬、そして蔡の4氏に何度か会ったことがある。
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