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[8]タイムスリップしたような地方の魅力

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 首都ハバナの旧市街は、石畳や石造りの旧スペイン植民地風の建築が並ぶ。それもいいが、地方の町に行けば、街そのものが200年前にタイムスリップしたような気配だ。

 ハバナから南東に3時間半、車で走るとシエンフエゴスの街だ。スペインの植民地だったキューバには珍しく、フランスからの移民が建設した町である。中心部の広場に面して劇場や石造りの建物がそびえる。いかにもフランス風の造りだ。

 街は「南の真珠」と呼ばれ、旧市街はユネスコの世界遺産に登録されている。キューバで最も清潔な街と言われる。

 確かにゴミが落ちていない。スペインから来た支配者たちは好き勝手に荒らしたが、フランスからの移民は自分たちが住むだけに、こぎれいにしようと努め、それが慣習化したのだろう。

カリブ海の朝焼け=トリニダー近郊でカリブ海の朝焼け=トリニダー近郊で 撮影・筆者
 広場のベンチでは市民がくつろぐ。若者はスマホで会話し、お年寄りは日傘を手にくつろぐ。元気のいいおじいさんがギターを手に歌っている。

 石畳の通りの両側の建物は白壁で統一されていた。手押し車に乗せたパイナップル売りに人だかりがしている。

カリブ海の朝焼け

 ここから東へ2時間走るとキューバの南部、カリブ海に到達した。

 海辺には、観光を国の主産業にしようとした政府の意図で新しいリゾートホテルが造られている。

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