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男の子の得度式

 ミャンマー中部の古都バガンの一角にミンチントゥ村がある。今から約1000年前にこの国の最初の王朝の首都として繁栄したバガンの中でも、当時の面影をとりわけ今に伝えるのがこの村だ。

牛車が牽く得度式の行列=バガンで 撮影筆者拡大牛車が牽く得度式の行列=バガンで 撮影・筆者
 赤い屋根の家、赤土の道を歩いていると、すさまじい音が遠くから響いてきた。拡声器で音楽を流している。

 音のする方に行くと、行列がやってきた。牛が牽(ひ)く車が10台くらい、一列になって村を練り歩いている。幼い男の子が坊さんになる得度(とくど)式だ。

 牛は肩にコブを持つ白いセブー種だ。2頭の白牛は頭や背中に赤い花飾りをつけている。

 牛が牽く車の荷台も、祭の山車のように金色の彫刻が施されている。そこには金色や紫色のきらびやかな衣装を着た幼い子が座り、かたわらの女性が子どもに日傘を差しかける。

 列が向かうのは僧院だ。頭の毛を剃り落して沙弥(しゃみ)という見習い僧になる。もっとも、この時期の出家の期間は1週間から1~2カ月にすぎない。それが過ぎるとまた元の生活に戻る。

 得度式を行う男の子は普通7~8歳だが、この行列の子の最年少は5歳だった。着ている衣装は王子の装束をあしらったものだという。日本でいえば七五三に当たるような通過儀礼だけに、親は貯金をはたいてせいいっぱい着飾らせる。

スーチーさんの「影響力」

土産物屋はスーチーさんの与党の支部事務所でもあった=バガンで拡大土産物屋はスーチーさんの与党の支部事務所でもあった=バガンで 撮影・筆者
 ヤシの葉で屋根をふいた家が並ぶ集落に入ると、2階建ての雑貨屋があった。店先には布地や絵ハガキなどの土産物が売られていた。

 そばの土間にはゴザが敷かれ、糸車のわきでおばあさんが特産の葉巻をくゆらせている。おばあさんは91歳だ。やにわに糸車を回して糸を紡ぎ出した。

 店の2階のバルコニーにはミャンマー語と英語で「国民民主連盟」と書いたピンクの看板が掛かっている。ここはアウンサンスーチーさんの ・・・ログインして読む
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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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