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[5]民主派政権に浮かれている暇はない

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

男の子の得度式

 ミャンマー中部の古都バガンの一角にミンチントゥ村がある。今から約1000年前にこの国の最初の王朝の首都として繁栄したバガンの中でも、当時の面影をとりわけ今に伝えるのがこの村だ。

牛車が牽く得度式の行列=バガンで 撮影筆者牛車が牽く得度式の行列=バガンで 撮影・筆者
 赤い屋根の家、赤土の道を歩いていると、すさまじい音が遠くから響いてきた。拡声器で音楽を流している。

 音のする方に行くと、行列がやってきた。牛が牽(ひ)く車が10台くらい、一列になって村を練り歩いている。幼い男の子が坊さんになる得度(とくど)式だ。

 牛は肩にコブを持つ白いセブー種だ。2頭の白牛は頭や背中に赤い花飾りをつけている。

 牛が牽く車の荷台も、祭の山車のように金色の彫刻が施されている。そこには金色や紫色のきらびやかな衣装を着た幼い子が座り、かたわらの女性が子どもに日傘を差しかける。

 列が向かうのは僧院だ。頭の毛を剃り落して沙弥(しゃみ)という見習い僧になる。もっとも、この時期の出家の期間は1週間から1~2カ月にすぎない。それが過ぎるとまた元の生活に戻る。

 得度式を行う男の子は普通7~8歳だが、この行列の子の最年少は5歳だった。着ている衣装は王子の装束をあしらったものだという。日本でいえば七五三に当たるような通過儀礼だけに、親は貯金をはたいてせいいっぱい着飾らせる。

スーチーさんの「影響力」

土産物屋はスーチーさんの与党の支部事務所でもあった=バガンで土産物屋はスーチーさんの与党の支部事務所でもあった=バガンで 撮影・筆者
 ヤシの葉で屋根をふいた家が並ぶ集落に入ると、2階建ての雑貨屋があった。店先には布地や絵ハガキなどの土産物が売られていた。

 そばの土間にはゴザが敷かれ、糸車のわきでおばあさんが特産の葉巻をくゆらせている。おばあさんは91歳だ。やにわに糸車を回して糸を紡ぎ出した。

 店の2階のバルコニーにはミャンマー語と英語で「国民民主連盟」と書いたピンクの看板が掛かっている。ここはアウンサンスーチーさんの

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