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[1]沖縄の人々の命は「国益」より軽いのか

新垣毅 琉球新報社東京報道部長

沖縄は何が変わったのか

 あの時の衝撃が忘れられない。1995年9月、沖縄で海兵隊員3人に少女が輪姦された事件が報じられた。東京で学生生活を送っていた私は、自分のふるさとを見つめ直さざるを得ない気持ちに駆られた。「沖縄問題とは何だろう」と。

 報道から1カ月余りたってから、沖縄では、事件に抗議する超党派の県民大会が開かれ、主催者発表で8万5000人が結集した。その壇上で、当時の大田昌秀県知事はこう述べた。

 「行政をあずかる者として、本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを、心の底からわびたい」

 あれから21年。沖縄は何が変わったのか――。

女性の遺体が遺棄された現場で手を合わせる沖縄県の翁長雄志知事=1日午後7時9分、同県恩納村20160601女性の遺体が遺棄された現場で手を合わせる沖縄県の翁長雄志知事=2016年6月1日、沖縄県恩納村
 今年4月、20歳の女性が暴行、殺害され、遺棄されたとみられる事件が発生した。米軍嘉手納基地で働く元海兵隊員の軍属が死体遺棄の容疑で逮捕された。

 私は沖縄の一新聞人として、この事件を防げなかったことを、当時の大田知事と同じように、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 事件後、沖縄からは党派を超えて日米地位協定の抜本改定を要求する声が上がった。

 沖縄県議会は在沖米海兵隊の撤退要求を盛り込んだ意見書を全会一致で可決した。

 琉球新報と沖縄テレビが実施した世論調査では、米軍関係者の事件事故の防止策には「沖縄からの全基地撤去」が最も多く、42・9%に上り、「在沖米軍基地の整理縮小」(27・1%)、「兵員への教育の徹底」(19・6%)を大きく上回った。

 このように、基地に反発する世論は強まった。6月5日の県議選では翁長雄志知事を支援する県政与党が躍進し、安定過半数を維持する結果が出た。

 そのような状況下で、5月31日、県警は、覚せい剤取締法違反や大麻取締法違反の容疑で米軍属の男ら4人を逮捕・起訴したと発表した。

 6月4日には、酒に酔った状態で車を逆走させて軽自動車に衝突し、男女計2人に骨折など重軽傷を負わせたとして、道交法違反(酒酔い運転)の疑いで米軍嘉手納基地所属の米海軍兵が現行犯逮捕された。米軍属女性遺棄事件を受けて在沖米軍が米兵、軍属の基地外での飲酒を禁じた措置に違反し、基地の外で酒を飲んで起こした事件だった。

 もはや日米政府の「綱紀粛正策」が抜本的に機能しないのは明らかだ。

冷たい日本人

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