世界の潮流はクオータ制からパリテ法へ
2016年07月04日
注)この立憲デモクラシー講座の原稿は、3月4日に早稲田大学で行われたものをベースに、講演者が加筆修正したものです。
立憲デモクラシーの会ホームページ
http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/
「性別比例の原則」という言い方を、『私たちの声を議会へ 代表制民主主義の再生』では書きました。いま、意思決定が男女半々であることは民主主義上求められていません。国会議員の9割が男性でも、非民主的とまでは言われないですね。でも、21世紀が終わる頃には、意思決定が男女半々でないような場合には民主的でないとみんなが思う社会になるのではないかと思っています。
女性参政権が一番早く実現したのはニュージーランドで、19世紀末のことでした。20世紀になって、女性にも参政権があるのは普通だという感覚が広がりました。民主主義の考え方は常に発展してくわけです。いまは意思決定に関わるのが9割男性とか、あるいは全員が男性でも、日本の場合にはそういうことは実際にあるわけですが、それをもって民主主義ではないとは思われていません。
でもやがては、すべての意思決定において、男女がほぼ半々でないような状況で決まったものは、民主的正当性がないと思われるようになるでしょう。民主主義の原則として、意思決定における性別比例の原則が浸透するのではないかと考えています。
実は、世界的にはクオータ制という発想があります。割合を決めて、候補者の何割かを女性や男性に割り当てる制度です。最近の潮流は、クオータ制ではなくて、男女半々の「パリテ法」へと動いています。
クオータ制ということが言われはじめたときには、男女平等、ジェンダー平等のためには、男女の均衡が必要だ。そのためにはクオータ制を取り入れよう。いずれ均衡がとれたら、クオータ制をやる必要はない。そのような暫定的な特別措置としてクオータが構想されました。
ところがいまは徐々に発想が変わりつつあって、手段としてクオータ制を用いるのではなく、民主主義の原則そのものとして、男女同数の意思決定を捉え直すようになってきています。人口は男女半々なのだから、意思決定においても男女同数で決めるのが民主主義だと、発想転換の途中にあります。
ラテンアメリカがその意味では時代をリードしていると言えます。クオータ制を施行していた8カ国が、民主主義の原則としてパリテ法へ移行しました。おそらく日本も21世紀が終わる頃には、世界の潮流を取り入れて、ありとあらゆる意思決定――PTAであったり、部活であったり、いろいろな意思決定がありますが――すべてにおいて「男女半々で決めよう、それが当たり前じゃない? なぜそれを問わなきゃいけないの?」という時代が来るのではないかと思っています。
皆さん、女性に参政権がないなんて、まったく信じられないでしょう?
1946年4月10日に女性参政権を行使する初めての選挙がありました。ちょうど70年前です。
その結果、39人の女性議員が誕生しています。いま何人いるかご存知ですか? たったの83人です。実はこの39人っていうのは世界的に見ても高いレベルでした。衆議院だけで39人いたのですが、いまは衆参合わせて83人しかいません。70年経って、一体どのぐらい私たちの国が進歩したのでしょうか。やはりいろいろな形で民主主義を鍛え直していくことが必要です。
双方向コミュニケーションを高めるなどのお話をしましたが、女性議員を増やすことも、民主主義をより民主的にしていく一つの大事な方法だと思っています。
コミュニケーションの観点からは、女性議員が増えることによって政治コミュニケーションが豊かになると考えられます。女性にとっては女性議員の方が話しかけやすく、共通の経験を基盤に、声を届けやすい、聞いてもらいやすいということがあるからです。議員構成に性別の偏りがなく、また多様性が確保されれば、それは双方向コミュニケーションの可能性をさらに高めるといえるのです。
宣伝になりますが、4月10日の女性参政権行使の70年目の日に、女性議員を「本気で増やす」シンポジウムをやりますので、ぜひ来ていただけたらと思います。
~質疑応答~
小原隆治(早稲田大学):三浦先生ありがとうございました。ぜひ4月10日、皆さん、にぎにぎしく上智までお出かけください。山口二郎さんから3回ほど、割合と直接に安倍政治批判、安倍改憲政治批判の内容である講演が続きましたけど、きょうはもう少し、一歩、二歩下がって、こう俯瞰した形で、私が思っていた以上に政治学の本流のお話をしてくださいまして、代表とは何であろうかとか、あるいは政党っていうのはどういう道具なんだろうかとかいう話をベースにしながら、もちろん女性の問題ですとか、マイノリティーの問題も混ぜてお話しされたということです。30分ぐらいを一応の目安にして、
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