奇妙に静かな、「新権威主義」体制下で初の選挙
2016年07月07日
参議院選挙の終盤予測では、いわゆる改憲4党が3分の2を確保する勢いという。安倍首相は選挙戦で改憲を語らない戦略を取っているが、発議可能な議席をとれば、選挙後にはいよいよ改憲を目指して動き始めるだろう。
これは政治的な趨勢である。前回の参議院選挙(2013年)や衆議院選挙(2014年)の際、私はこの選挙は「歴史の分岐点」と書いた。その分岐点で与党が勝利したのだから、その流れを逆転させるのはそもそも相当に困難なのである。
安倍政権はアベノミクスで支持を得てきたが、経済的にはその失敗がデータによって明らかになっている。だから政権は消費税の増税を延期した。これは前回の衆院選などでの公約に反している。
格差も増大している。年金運用でも巨大な損失が明らかになり、その公表を参院選後に延期している。金銭スキャンダルで甘利明経済再生担当大臣が辞任した。他の様々な疑惑も次々と一部では報じられており、政治的な腐敗が進行している。大騒ぎになった舛添東京都知事も与党が推薦した知事だ。
こういった問題が選挙戦で正面から議論されてテレビなどで大々的に報じられれば敗北してしまうから、与党は政策問題にあまりふれたくないのだろう。今回の選挙戦で経済・社会政策は政党間で本格的に議論されていないように見える。安倍首相は政策問題を詳しく語らず、もっぱら民共連合の批判に力を注いでいる。
でも今回の選挙は政権選択選挙ではないから、野党が勝っても政権が代わるわけではなく、政権担当能力が問われることもない。だからもっとも大事な論点が憲法問題であることは明らかだ。実際に野党連合は安保法における立憲主義の無視や改憲の危険を訴えているが、与党はその争点を隠そうとしていて、この問題性を多くのメディアもさほど大きく報じてはいない。
論点がわからないのだから、これでは人々の政治的関心は盛り上がらない。さすがに各紙も改憲発議が可能となる3分の2というラインに関して報じてはいるのだが、未だにこの選挙の歴史的位置に気づかない人々が多い。だから棄権も相変わらず多そうだ。
こう見てくると「なぜ与党が勝ちそうなのか?」という疑問が湧いてくる
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