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[9]韓国の日本語ブームは日本で就職するため?

伊東順子 フリーライター・翻訳業

両国世論が好転

 前回「今年1月に昨年(2015年)の同時期に比べて受講者が3倍になった」という、韓国最大手の日本語学校の話を書いた。

 「日本語人気」ということは、つまり「日本」が人気なのだろうか。数年来「最悪」と言われ続けた日韓関係だが、今年に入って両国の国民感情に変化の兆しがみられることは、最近の世論調査からも報告されている。

 7月末に日韓の民間シンクタンクが発表した世論調査に関して、日韓のメディアの多くが「昨年に比べて相手への感情が好転」というテーマで報道した。特に日本のメディアは一律に以下の部分をとりあげた。

 「日本人の韓国に対する印象で『良くない』と答えたのは44・6%で、前年より7・8ポイント下がり、改善した。韓国人の日本に対する印象は『良くない』が61%と高いものの、前年の72・5%と比べると11・5ポイント改善した」(7月21日付『朝日新聞』)

 この調査の結果は、ここよりも他の部分の方が面白いのだが、その話は後に回す。とりあえずは、韓国人の日本への感情に変化が見られたこと、10人に1人ぐらいの割合で「日本? いいんじゃないの」みたいになったということである。ちなみに、日本に対する印象が「良い」と答えた韓国人は21.3%、こちらは前年より5.6ポイントの上昇にすぎない。

 この「好転」のきっかけは、多くの人が指摘するように、昨年の従軍慰安婦問題における政府間合意だろうと、私も思う。いや、そんなのじゃなくて、地道な交流の成果だと言う人もいるが、「政府間合意」以前には交流さえもままならない状況が続いていた。

 たとえば文化交流などの予算が下りないという生々しい問題もあるのだが、それよりも痛かったのは大手メディアや公務員などが「腰抜け」だったことだ。それは言い過ぎだというなら、「超及び腰」と言おうか。トップの顔色を伺ってばかりで、自分でガシガシ進んではいけない。空気を読んで「自粛」する。これは東アジアの国の国民性なのかもしれない。

 「合意」以降に、テレビニュースなどのトーンは明らかに変わった。なるほど、トップが形だけでも決断してあげることは、日韓に限っていえばとても重要なのだ、ということを、あらためて感じた。

日本語学校の異変

 そして今年になって、日本語学校の受講者が昨年同時期の2~3倍になった。これ自体うれしい変化なのだが、ちょっと不思議な現象もあるという。

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