メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

北方領土問題、「2島先行方式」浮上の意味

12月のプーチン氏訪日で一気に前進?

大野正美 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

 今年12月に安倍晋三首相の地元山口県で予定されるプーチン・ロシア大統領の訪日を前に、北方領土問題での日本の解決策に「歯舞、色丹の2島引き渡しで平和条約を結び、残る国後、択捉2島については継続協議」にするという「2島先行方式」が浮上してきた。

 きっかけは読売新聞が、9月23日付の朝刊でこの内容を1面で報じたことだ。同日、菅義偉官房長官は記者会見で「まったく報道の事実はない」と否定した。

 しかし、ロシア研究と北方領土問題の大家である木村汎・北大名誉教授が9月26日に国家基本問題研究所のニュースレターで、山口の首脳会談で出される共同声明には「歯舞・色丹の2島の対日引き渡し後も、日ロ両国が国後・択捉に関する交渉を継続するという文言が入れられるだろう」とした上で、歯舞・色丹引き渡しで日本と平和条約を結んだ後、「目的を達したプーチン政権が残りの2島についての交渉など真剣に行うはずがない」との見解を示した。波紋は広がっている。

「固有の領土」でも帰属は変わる

 たしかに菅氏は口では報道を否定した。だが、会見では「4島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶために粘り強く交渉を進めて行く方針は、まったく微動だにしていない」とも語っている。いつもの政府方針の繰り返しではあるが、この方針自体、4島が日本に帰属することの確認を交渉の目的にはしておらず、「帰属問題を解決した結果、歯舞、色丹の帰属は日本ということで平和条約を結ぶ」可能性を頭からしりぞけるものではない。

 安倍首相もまた、臨時国会での衆院所信表明演説で「首脳同士のリーダーシップで交渉を前進させていく」とプーチン氏の訪日に向けて意欲を示す一方で、10月3日の衆院予算委員会では「北方領土は日本固有の領土だ」との考えを改めて示した。さらに、「4島の帰属問題を明らかにして平和条約を締結する」と菅氏の言葉を繰り返した。

「東方経済フォーラム」に臨む(右から)安倍晋三首相、ロシアのプーチン大統領、韓国の朴槿恵大統領=3日午後1時5分、ロシア・ウラジオストク20160903拡大「東方経済フォーラム」に臨む安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領=2016年9月3日、ロシア・ウラジオストク
 とはいえ「日本固有の領土」とは、日本政府の説明によると「近代以降の国際法のもとで過去に一度も日本以外の他国の領土になったことがない」という事実を指し、それだけで「何が起ころうとも日本の領土で残る」ことを可能にするような国際法上の効力を持つものではない。

 つまり交渉で合意すれば、たとえ「固有の領土」であっても帰属が変わることはありえるのだ。

 政府首脳の言葉に基づく限り、解決方式として「2島先行」がとられる余地は、実際上は残されているのである。

政策転換→総選挙という荒業

 さらに注目されるのは、9月初めに安倍首相 ・・・ログインして読む
(残り:約2330文字/本文:約3385文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大野正美

大野正美(おおの・まさみ) 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

1980年、朝日新聞社入社。水戸支局、外報部、東京社会部などを経て、1986年からサンクトペテルブルクに留学、モスクワ支局勤務は3回計11年。論説委員、編集委員、国際報道部・機動特派員を経て、現在は報道局夕刊企画班。著書に『メドベージェフ――ロシア第三代大統領の実像』『グルジア戦争とは何だったか』(いずれもユーラシア・ブックレット、東洋書店)など。

大野正美の記事

もっと見る