12月のプーチン氏訪日で一気に前進?
2016年10月05日
今年12月に安倍晋三首相の地元山口県で予定されるプーチン・ロシア大統領の訪日を前に、北方領土問題での日本の解決策に「歯舞、色丹の2島引き渡しで平和条約を結び、残る国後、択捉2島については継続協議」にするという「2島先行方式」が浮上してきた。
きっかけは読売新聞が、9月23日付の朝刊でこの内容を1面で報じたことだ。同日、菅義偉官房長官は記者会見で「まったく報道の事実はない」と否定した。
しかし、ロシア研究と北方領土問題の大家である木村汎・北大名誉教授が9月26日に国家基本問題研究所のニュースレターで、山口の首脳会談で出される共同声明には「歯舞・色丹の2島の対日引き渡し後も、日ロ両国が国後・択捉に関する交渉を継続するという文言が入れられるだろう」とした上で、歯舞・色丹引き渡しで日本と平和条約を結んだ後、「目的を達したプーチン政権が残りの2島についての交渉など真剣に行うはずがない」との見解を示した。波紋は広がっている。
たしかに菅氏は口では報道を否定した。だが、会見では「4島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶために粘り強く交渉を進めて行く方針は、まったく微動だにしていない」とも語っている。いつもの政府方針の繰り返しではあるが、この方針自体、4島が日本に帰属することの確認を交渉の目的にはしておらず、「帰属問題を解決した結果、歯舞、色丹の帰属は日本ということで平和条約を結ぶ」可能性を頭からしりぞけるものではない。
安倍首相もまた、臨時国会での衆院所信表明演説で「首脳同士のリーダーシップで交渉を前進させていく」とプーチン氏の訪日に向けて意欲を示す一方で、10月3日の衆院予算委員会では「北方領土は日本固有の領土だ」との考えを改めて示した。さらに、「4島の帰属問題を明らかにして平和条約を締結する」と菅氏の言葉を繰り返した。
つまり交渉で合意すれば、たとえ「固有の領土」であっても帰属が変わることはありえるのだ。
政府首脳の言葉に基づく限り、解決方式として「2島先行」がとられる余地は、実際上は残されているのである。
さらに注目されるのは、9月初めに安倍首相
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