メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大統領へのノーベル平和賞はコロンビア和平を救う

最も平和に貢献した平和賞に?

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

妖しいものが集まった魔の地

 なければないでかまわないが、あれば人の心をかき乱す。そんな妖しいものが集まった魔の地が南米コロンビアだ。緑の宝石エメラルド、あでやかな蘭のカトレヤ、コクのあるコーヒーと華やかな美女、そして麻薬のコカイン……。

 蠱惑的なものがこれほどそろっていれば、人は幻惑される。夢と現実が織りなすガルシア・マルケスの作品が生まれたのも、この風土だからこそだ。

 現実の政治も小説さながらだ。大土地支配を続けようとする旧勢力、米国流の新自由主義を狙う新勢力、さらに政権を奪おうとする左翼ゲリラが絡んだ。それも世界のゲリラのオンパレードのように。

ノーベル平和賞を受賞したコロンビアのサントス大統領=ロイターノーベル平和賞を受賞したコロンビアのサントス大統領=ロイター
 今年度のノーベル平和賞を受賞するフアン・マヌエル・サントス大統領(65)は、半世紀にわたる内戦を終わらせようと夢見た。ゲリラ側と4年をかけた粘り強い交渉の末に、ついに和平合意を得た。

 それもつかの間、やらなくてもいい国民投票をして、過半数が合意の内容に反対という結果を招いた。和平は頓挫したかに見えた。

 窮地を救ったのがノーベル平和賞だ。

・・・ログインして読む
(残り:約2192文字/本文:約2660文字)