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10月11日(火) 局で定例会議。13時Z誌編集部からの取材。新著『抗うニュースキャスター――TV報道現場からの思考』(かもがわ出版)について話を聞きたいとの趣旨だったので引き受けた。今では書店の棚に置いておかれる期間が極端に短くなっているので、自分でもできるだけ販促をやらねばならない。出版元に報いるためにも。『Journalism』の原稿。熊本取材の仕込みをしつつ。蒲島郁夫県知事に木曜日インタビューする予定。

10月12日(水) このところ運動不足で体がなまっていたので朝、久しぶりに泳ぐ。その後サウナに入っていたら、BGMでビージーズの大昔の曲『How Deep is Your Love(愛はきらめきの中に)』がかかって、何だか涙ぐんでしまった。いい歌だなあ。

 ニューヨークから来日中の青木富貴子さんから沖縄で取材中との電話がかかってきて少し話す。『調査情報』連載の校正。今回が連載70回目にあたるので、ちょっと型破りだが、長篇詩の掲載を試みたのだが、どうかなあ……。明日からの熊本取材の簡単な打ち合わせ。熊本市は今日、地元メディアに熊本城の内部を撮影取材させたようだ。

 都内で大規模停電。マリインスキー・オペラ『ドン・カルロ』。何しろゲルギエフがやっているのだ。専制国王をプーチンに、宗教裁判所をロシア正教かあるいはKGBに、フランドルをウクライナに置き換えながらみてしまった。カルロ役のヨンフン・リーは頑張ってはいたが、ちょっと一本調子で、他のロシア人歌手たちに挟まれると大変だなあと思ってしまった。

ボブ・ディランが受賞、いいなあ! わはは

10月13日(木) 朝5時半起床。7時10分発の便で熊本へ。空港でかつて地震直後の取材でお世話になったドライバーのMさんと再会。地震発生から半年の節目を迎える熊本を取材。益城町の被災者Mさん、Nさんと再会。2人はテクノ仮設団地に入居していた。益城総合体育館の入り口近くのフロアに段ボール製のベッドの上に横たわっていたのをSディレクターが取材して以来の交流が細々と続いてきた。逆境のなかにありながら、笑顔を絶やさないこの2人に会うと、逆にこちらが励まされるような気持ちになってしまう。それくらいお2人は前を向いて生きている。

益城町の仮設住宅で拡大熊本・益城町の仮設住宅で=2016年9月(撮影・朝日新聞社)

高原耕平 「心のケア」への違和感――熊本地震をめぐって 被災者の虚無感に付き添うということ

 午後1時すぎ石牟礼道子さんのお見舞い。その後、仮設住宅取材。既視感のある光景だ。

 南三陸や福島県内で数多くの「仮設」をみてきた。そして「仮設」は今もなくなっていない。僕らの国の為政者たちは、「仮設」からの自立支援にではなく、オリンピックのスタジアム建設に巨額の経費を投入しようとしている。計画段階ですでにドブに巨額のカネを捨てるような失策をしでかしている。デザイン料、エンブレム料、オリンピックを理由にした築地市場移転、100年を超える時代を生きてきた街路樹をなぎ倒してオリンピック「環境整備」なるものをやろうとしている。やるべきことの優先順位が違うんじゃないのか。言葉の真の意味で「亡国の」為政者たちが闊歩する時代になったと思う。彼らを選択しているのは誰か。

 「仮設」に住む人々への聞き取り調査に同行。夕刻、蒲島・熊本県知事インタビュー。ライトアップされた熊本城をバックにまるまる30分話を聞いた。夜の熊本市内は賑わいを取り戻しているようにみえる。

 宿舎に戻ったところで、何とボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したとの一報。いいなあ! わはは。こういうこともノーベル賞選考委員会はやるんだ。熊本放送のM氏。東京から現在進行形の出来事ひとつ。

10月14日(金) 朝、目が覚めてテレビをつけたら「朝イチ!」が熊本の益城町・西原仮設住宅から生放送していた。きのうのボブ・ディランの件。やはりこれは相当に面白い出来事だ。選考理由の発表がふるっていた。ホメロスやサッフォーを引き合いに出していたようだ。想像力の豊かさに何だか嬉しくなってしまう。かつて音楽界の「3大B」と称して、バッハ、ベートーベン、ビートルズとか言われていたことがあったけれど、そういう感覚を久しく忘れていた。脱領域の知性。そう言えば、ディランの本を書いた湯浅学さんは喜んでいるんだろうなあと思う。ただ、ディラン受賞には強烈な反発もあるようで、スコットランドの作家、アービン・ウェルシュの罵倒がなかなかのものだ。「I'm a Dylan fan, but this is an ill conceived nostalgia award wrenched from the rancid prostates of senile, gibbering hippies.」(私はディランのファンだ。しかし今回のノーベル文学賞は、もうろくしてわめき立てているヒッピーどもの悪臭がする前立腺からひねり出されたノスタルジックな賞でしかない」(きっこのブログ訳)。ははは。

ボブ・ディランを語らずにいられない(WEBRONZA)

 熊本市役所のあと、ホテルをチェックアウト。市の中心部の賑わいをみたあと再び益城町へ。今日で熊本地震発生からちょうど半年だ。益城町では同業者(他社の報道陣)を見かける。仮設住宅の聞き取り調査をしている熊本大学・円山准教授から話を聞く。

 九州新幹線で博多に移動。わずか38分。福岡空港から沖縄・那覇へ。T氏。N氏。沖縄在住のジャーナリストHさんらが取材していた米国在住の「ジュリ」の生き証人の方が2~3週間前に亡くなったことを知る。現在進行形。

南スーダンで、沖縄で、イラクで…

10月15日(土) 朝の便で羽田に。機内で聴いた宇多田ヒカルの新アルバム『Fantome』がいい。特に一番最初の曲「道」に惹かれた。

 「報道特集」のオンエア日。「熊本地震から半年」特集と、自衛隊の「駆けつけ警護」が見込まれる南スーダンのすざまじい現実の2本立て。南スーダンの生々しい国内治安状況に衝撃を受けた。日本のテレビでここまでしっかりと報じられたことはなかったのではないか。稲田防衛大臣のわずか7時間の滞在をもとに、空虚な国会審議が進められていることへの強い警鐘となったのではないか。「愛国心は卑怯者の最後の隠れ家」という箴言があるが、国会でのスタンディング・オベーション騒ぎや、南スーダン情勢のいい加減な分析ぶりをみていると、この箴言を思い出す。新宿E。現在進行形。

谷田邦一 陸自の南スーダン派遣は「殺し、殺される」想定だ――訓練やマニュアルからみるPKO部隊の新任務

10月16日(日) 身心が少々しんどい時は泳ぐ。ゆっくり30分間。散髪。弱っている時は音楽を聴くのだ。白崎映美&東北6県ろ~るショ~!! 飛び込みでみてしまった。休憩時にプランクトンの川島恵子さんらと立ち話。お能とケルト。

 夕方、ポレポレ東中野で、藤本幸久&影山あさ子両監督による映画『高江 森が泣いている』の上映&トークに参加。沖縄・高江の「無法状態」(公権力がやりたい放題という意味で「無法」と言っているのだ)は、現政権の対沖縄政策の象徴だと思う。とにかく機動隊の暴力が非道だ。

当選を確実にし、支持者から花束を受け取る米山隆一氏拡大新潟県知事に当選した米山隆一氏(撮影・朝日新聞社)
 午後9時すぎ新潟県知事選挙で野党推薦候補の米山隆一氏が当選確実の第一報。ネット情報は早い。原発再稼働に対する不安は立地県では大きくなっていることは間違いない。それと今回の場合、与党系候補の魅力がなさすぎたか。

 帰宅して、NHKのEテレ、ロシアのピアニスト、デニス・マツーエフとN響でプロコフィエフのピアノ協奏曲2番。久しぶりに興奮した。プロコフィエフの2番の第一楽章では、記憶に残っているコンサートがある。ワシントンDCに住んでいた頃(2003年か4年?)、ケネディ・センターでゲルギエフの指揮でこれを聴いた時のことだ。ピアノのソロとストリングスのバランスがよい上に、かつストリングスから伝わってくる響きというのか、バイブレーションというのかな、得も言われぬ美しさで、これはCDやレコードでは絶対に再現できない、会場でしか感じられない臨場感覚だった。それ以外のことはほとんど忘れてしまった。

10月17日(月) 雨。イラク軍、モスル奪還作戦を開始とのニュース。また多くの血が流れるのか。イラクのクルド人自治国の首都アルビルからMが中継していた。羽田空港。早稲田。明治。

 新潟県知事選挙の報道。新聞は各紙一面トップだが、前知事との間でいろいろといきさつがあった新潟日報の報道ぶりに注目して読んだ。

 「県政課題 原発問題に埋没」というタイトルで、報道部長が書いた記事が同紙の現在のスタンスを端的に示しているようにみえた。

 <選挙戦はさながら再稼働の是非を選択する県民投票と化した。><とはいえ原発問題ばかりに焦点を当てるような選挙戦には違和感を抱いた。><日本海横断航路計画の船購入問題をはじめとする泉田県政のマイナス面が覆い隠されたかのようになったことも問題だ。><米山県政は県議会では少数与党となる。最大会派の自民党への対応次第では、県政が大混乱に陥る可能性がある。原発再稼働に対する民意が明確に示された一方で、県政運営に欠かせない国や市町村との連携はどうなるのか。横断航路問題といった泉田県政の負の違算への対応も待ち構えている。>

 うーん、何だかなあ。前知事との確執がものすごいことになっている。夜、CSのTBSニュースバード「ニュースの視点」で『君とまたあの場所で~等身大のイラク・シリア難民』の再放送をみる。フォトジャーナリスト安田菜津紀さんと佐藤友香キャスター。写真とことばのチカラに敬意。夜、三上智恵さんのFacebook で、山城博治さん逮捕を知る。


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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