人道危機は避けられるのか
2016年10月26日
米軍主導の有志連合の空爆によって支援を受けたイラク軍が、過激派組織「イスラム国(IS)」に支配されたモスル奪還作戦を始めた。モスルは2014年6月に制圧されたが、イラク政府は2015年春からISへの攻勢を強めており、2年4カ月ぶりのモスル奪還で、ISの排除を目指す。
一方のIS側は4000~8000人の戦闘員を抱えるとされるが、シリア側から増援があるかもしれないという。
今回のモスル奪還作戦は10月17日に始まり、アバディ首相は「歴史的な作戦が始まったことを誇りに思う。大勝利の時は来た」と作戦開始を宣言した。
ただし、イラク第2の都市であるモスルには、IS支配下で150万人の民間人が暮らしている。
奪還作戦が始まった17日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「モスルの人々に救援を」とする国際的な募金を訴えた。モスル奪還作戦では、最悪の場合、市民の巻き添えとともに、100万人の避難民・難民が出ることが予想される。その対応には200億円が必要だが、これまでに33%しか集まっていない、という訴えである。
奪還作戦の直前まで、シリア北部のアレッポで反体制勢力の支配下にある市東部がアサド政権軍の包囲攻撃を受け、政権軍とロシア軍による空爆で27万人の市民が人道的な危機に直面している、という報道が連日続いていた。
破局に瀕する27万人超の民間人、アレッポの悲劇――ロシアと米国の確執の間で進む人道危機(WEBRONZA)
国連人権高等弁務官が国連安保理に対して、アレッポで民間人を無差別空爆する政権軍やロシア軍を戦争犯罪の罪で国際刑事裁判所に付託すべきだと意見を述べた。
そのような状況で、モスル奪還作戦が始まった。
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