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10月18日(火) 朝から局で定例会議。先週放送した南スーダンの特集の評価が高かった旨確認しあう。その後、N、S、Sと沖縄取材打ち合わせ。目玉は高江地区の全戸アンケート調査の実施。Sと米大統領選挙取材打ち合わせ。昼、現在進行形の件。

 午後、小池百合子都知事とIOCバッハ会長との会談をテレビでみる。全編、テレビカメラの前で行われ全面公開。テレビ各局が生中継対応している。小池劇場は連日大入り満員御礼といったところか。このところ都庁ネタで出動するカメラ台数激増。登庁・退庁を毎日撮っている人物なんて、小池都知事と安倍首相以外にはいないんじゃないのか。その意味では小池都知事は安倍首相を超えてしまった。都庁担当記者の睡眠時間が減っているはずだ。

 夕方、練馬。練馬区立光が丘四中の閉校問題の経緯を知るにつれて、行政の乱暴さに驚く。練馬大根サラダを食べる。沖縄のMさんから電話。機動隊員の「土人」発言に驚く。目取真俊さんがその模様を撮影していたらしい。夜中、NHKのBSで、9月に行われた東京ジャズフェスの模様をみる。すごい顔ぶれで行きたかったが行けなかった。あの頃は北海道の台風被害を取材していた。パット・メセニー、ミシェル・カミーロと上原ひろみの共演。

やんばるの森と「土人」発言の現場

10月19日(水) 朝6時20分発の便で那覇へ。朝日新聞の一面トップは、テレビ番組のインターネット同時配信を2019年にも全面解禁するとの総務省方針。放送法改正とNHK受信料の扱いが今後の焦点と。経済部の記者が書いたようだ。

 那覇空港から沖縄大へ。桜井国俊名誉教授のインタビュー。やんばるの森の世界的な価値。防衛局の欠陥環境アセスメント。オスプレイ離発着の環境への影響。赤土流出被害などを聞く。桜井氏の話ではむしろオフレコの話が面白かった。学生の貧困や投票行動をめぐる動向、環境会議の取り組みなど。東村高江へ。夢欄でそば。オアシスのような場所。

ヤンバルクイナが生息する照葉樹林が広がる=27日午後2時10、沖縄県東村高江拡大「自然の宝庫」、やんばるの森=沖縄県東村高江、撮影・朝日新聞社
 午後、チョウなどの生物研究者・宮城秋乃さんに、やんばるの森を案内していただく。森に入る前にヒメハブに注意するように言われる。

 わずか2時間の道行だったが、本当にやんばるの森が文字通り「自然の宝庫」であることを体感させられた。こどもの頃、僕は昆虫少年だったので、その頃の遠い記憶がよみがえってきた。

 宮城さんは大変な知識と行動力の持ち主で、丁寧に解説してくださった。川がとてもきれいだ。高江の子どもたちにとっては川が自然のプールになっている。

 森が保湿されている。「ブロッコリーの森」と言われているイタジイの原生林の深遠な風景に目を奪われる。

 2時間の間に出逢ったチョウの種類やそれ以外の生き物たちを書きとめておく。リュウキュウウラボシシジミ(準絶滅危惧種)、モンキアゲハ、ナガサキアゲハ、アオスジアゲハ、リュウキュウアサギマダラ、オオゴマダラ、ツマムラサキマダラ、クロマダラソテツシジミ、アマミウラナミシジミ、アオタテハモドキ、ツマグロヒョウモン、クロアゲハ、リュウキュウミスジ、ボニモンアゲハ、オオシマゼミ、クロイワツクツク、オオシオカラトンボ、リュウキュウルリモントンボ、ベニトンボ、オキナワシリケンイモリ。ノグチゲラの数は今や数百という単位にまで減ったという。

 高江の村営住宅にうかがい住民インタビュー。「土人」発言の余波広がる。現在進行形の事案。NHKの会長人事情報でTELあり。名護市内のホテル投宿。毎日新聞コラム。

10月20日(木) 午前6時に名護のホテル出発。高江に向かう。地元紙は「土人」「シナ人」発言をめぐって県警本部長が謝罪と一面トップで報じている。午前7時すぎに現地着。反対派の一斉行動日(水曜日、土曜日)ではないので反対派市民の数はそれほど多くはない。それでもN1ゲートからの砂利トラック搬入が始まった午前9時半前には40人ほどの人々がゲート前に集まっていた。そこへ3倍以上の機動隊員がやってきて排除、規制に乗り出してきた。

 きのうの「土人」発言事件の直後なので、現場にはどこか荒んだ空気が漂っている。前日の警備のありようと比べるとかなりソフトになっているとのこと。僕らのカメラのほかには何故かNHK沖縄のカメラクルーが来ていたが、その若い男性記者は、ゲート近くにはほとんど近づいてこないのだった。あとは琉球新報と沖縄タイムスの記者がいるだけ。

 ゲートに入ってくる砂利を積んだダンプカーの数は日に日に増えている。午前中にゲートに入ったダンプの数は視認しただけで48台だった。大阪から来て座り込んでいた女性がゲート前集会で話していたこと。知り合いの女性の息子が機動隊員で「今度、息子が沖縄に行く」とその女性が自慢げに話してくれたそうだ。「うちの息子は沖縄で起きている暴動を鎮圧するために行くんですわ」。

 反対派を撮影している警察側のビデオの数がやたらと多い。「報道ステーション」が「土人」発言の機動隊員の顔にモザイクをかけていたそうだ。N1テント裏に行く。反対派のテント内にはわずか4人しかその時はいなかった。いつガサ入れがあるかわからないので、必ず誰かが詰めていなければならないとのこと。

 ひとまず那覇へ戻る。Nカメラマンらは引き続きやんばるの森を撮影。NHKの夕方ニュースをみていたら米大統領選挙の解説。「TPP=良いこと」が前提であるかのように、ヒラリーやトランプの姿勢を批判的に紹介していた。沖縄のテレビのローカルニュースは、沖縄県警本部長が県庁を訪れて「土人」発言を謝罪したことを大きく報じていた。夜、Oさん、Yさんら5人と歓談。「土人」発言の根深さを話し合う。沖縄文化がクールジャパンに取り込まれそうになっているとの指摘あり。

10月21日(金) 初めて泊まった那覇市内のホテルには、中国からの観光客が多かった。なぜそんなことがわかるのかと言えば、朝食会場で話されていた会話がほとんど中国語だったからだ。エレベーターのなかでは英語を話している東洋系の老人たちがいた。話しかけてみたら何と世界ウチナーンチュ大会に参加するためにアメリカから訪れた沖縄移住者たちの末裔だった。こんなタイミングで、「土人」「シナ人」発言事件に遭遇して不愉快な思いをしていなければいいが。

 西嶋真司監督の『抗い 記録作家 林えいだい』をもう一度みる。重たい作品だ。田中泯のナレーションがいい。頼まれていたパンフレット用の文章を書き始める。那覇から羽田に向かう機内で鳥取県内を震源とする大きな地震(最大震度6弱、マグニチュード6.6)の情報を知る。

 夕方前に羽田着。地震の被害が心配だ。自宅を経由してから局へ。「ダヴィンチ」のPさん。『抗い』の原稿。京都精華大学での山本義隆の講演、行きたかったなあ。無理をすれば行けたかもしれないのだが体力的にも無理だったかな。高江のN1裏にガサ入れが入ったとの情報。まるで戦中の特高警察のやり口だ。

10月22日(土) 「報道特集」のオンエア日。日本シリーズの中継のためにいつもより1時間早い午後4時半から。RSKのFさんが取材した覚せい剤患者たちの更正ストーリー。田代まさしさんが登場する。もう一本は沖縄高江をめぐって。正午からのプレビューで、自分が想像していたものと、いわゆる「土人」発言部分の比重がかなり異なっていたので戸惑う。こういうことは往々にしてあるものだとわかってはいるのだが……。だが、住民の全戸アンケート調査などは光っていた。とにかく時間数が足りなすぎ。サラヴァ東京50周年記念のコンサートのお誘いに乗る。日本シリーズ、広島先勝。

サムルノリに時間を忘れ…

10月23日(日) ストレス解消にはとにかく泳ぐことだ。だがいつもの半分にとどめる。午後、電車を乗り継いで、埼玉県の飯能の先にある高麗(こま)神社へ。高麗川駅からはシャトルバスが出ていた。サムルノリの初代メンバーによる30年ぶりの高麗神社での公演にお誘いいただいたのだ。神社前で、Kさん、Nさん、K夫妻、Tさんらと合流。会場は神社の境内だ。午後4時からのスタートだが屋外で結構冷える。厚着をしてきて正解だった。何と元共同通信の平井久志さんも来ている。

サムルノリ=公演委員会提供拡大サムルノリ=公演委員会提供
 サムルノリと言えば、韓国の伝統的な楽器(パーカッションや銅鑼のような打楽器が中心)と、憑依(トランス)状態にまで至る過激なダンスが織りなす4人編成のパフォーマンス・グループだ。

 僕が初めて彼らをみたのは1987年ころではなかったか。どこかの学校のグラウンドみたいな会場で、ソーラン節民謡の伊藤多喜雄、喜納昌吉&チャンプルーズ、そしてサムルノリの3者共演という今ではあり得ない豪華版コンサートだったと記憶している。

 そのコンサートの最後がやはりサムルノリで、グラウンドを3周くらい練り歩いたんじゃなかったか。まるで「ハメルンの笛吹き」の魔力について行く子供たちみたいに、1000人くらいの観客がサムルノリについて行って踊りまくっていた。その昔、作家の中上健次や坂本龍一も彼らを応援していた。

 リーダーのキム・ドクス(金徳洙)はもう64歳になった。初代メンバーでみられるのは今回が最後かもしれないと思い、Kさん、Nさんのお誘いに素直に従った。やはり来てよかった。根をもった文化表現の強靭さとでも言うのか、途轍もないエネルギーのほとばしりの現場に立ち会った感動というのか、時間を忘れた。会場には1000人ほどの観客が来ていた。打ち上げにも参加させていただいた。キム・ドクスさんにご挨拶。帰りの電車のなかでビール。いけない、気持ちが高ぶると飲んでしまう。

10月24日(月) 映画『抗い』のパンフレット用原稿。午後、早稲田。夕方、CSのTBSニュースバードのキャスター、伊波紗友里さん、槇あやなさんの送別会。「ニュースの視点」で、僕のわがまま企画でよくご一緒していただいた。今後の飛躍を祈るばかり。新宿E。図書新聞Sほか。タケダワイナリーの蔵王スター・赤(一升瓶)。


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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