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 ウズベキスタンの首都タシケントの空港に着くと、そのまま乗り替えゲートに向かい、隣国のカザフスタンに飛んだ。1時間半後に着いたのはかつての首都アルマトイだ。

 アルマトイとは「リンゴの里」という意味だ。かつて町の周辺にリンゴ林が広がっていた。気温は30度だが、乾燥しているので心地よい。高地にあり、軽井沢のような環境だ。見上げれば万年雪をいただいた高峰を街からのぞむことができる。シルクロードのオアシス路を南北に分ける天山山脈である。

バスの車体にあるアルマトイの市章拡大バスの車体にあるアルマトイの市章=撮影・筆者
 街を走るバスの車体には白地に黒の斑点がある雪豹が口にリンゴの花をくわえて後ろを振り向いた市の紋章が描かれている。思わず身を乗り出した。

 動物が後ろを向くのは紀元前のスキタイ時代から伝わる、中央アジアの遊牧民族に特有な伝統文様だ。正倉院の文物に多く見られる花喰鳥(はなくいどり)文様は、鳥が花をくわえたデザインである。それを合わせたような紋章だ。

壁画が街のあちこちに

 ホテルのレストランの壁はシルクロードの人々を描いた壁画で全面が埋まっていた。フェルトの帽子をかぶった男たちが槍やこん棒を手に虎狩りをする絵。樹木の下で主人が客に御馳走を振る舞い楽士が弦楽器を奏でるそばで女性たちが赤ん坊をお湯につけている絵は出産を祝っているのだろうか。男が女性の前にひざまずいて言い寄る絵。いかにも中国人らしい男女が駱駝の背に荷を乗せた絵。さらには畑を耕す男、背に柴を負った男、鍛冶屋など仕事の風景を描いたものもある。

地下鉄のホームの壁画拡大地下鉄のホームの壁画=撮影・筆者
 壁画は街のあちこちにある。

 地下鉄1号線の駅の一つジベックジョルは、シルクロードという意味だ。つまりシルクロード駅である。

 このまま地獄まで行くのかと思うほど深いエスカレーターに乗ってホームに着いた。

 壁には壺を背負ったラクダや馬に乗った武人などの陶板がはめ込んである。シルクロードの王子と姫の結婚式を描いたような壁画もある。

 国立博物館を訪ねると、ホールの正面に「黄金人間」の像が立つ。 ・・・ログインして読む
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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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