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[13]朴大統領への巨大な怒り、しかし謎は残る

伊東順子 フリーライター・翻訳業

再び政治の季節がやってきた?

 「辛い」は韓国語で「メプタ」という。主に料理などに使われる表現だが、時には空気を表すときなどにも使われる。たとえばデモの鎮圧に催涙ガスが発射され目や鼻が痛くなるとき、人々はそれも「辛い」という。私が韓国に留学した90年代初頭も、学生街の空気は常に辛かった。

 またもや韓国にそんな政治の季節がやってきたのだろうか。日本とは違い、韓国ではデモや集会など国民の大衆行動が、国の方向を左右する。よって、ここ数週間における人々の動きが注目されるのは、多くの識者が指摘する通りだ。

ソウル市内の中心部で開かれた集会で、「朴槿恵退陣」と書かれたプラカードを掲げる参加者たち=10月29日拡大ソウル市内の中心部で開かれた集会で、「朴槿恵退陣」と書かれたプラカードを掲げる参加者たち=2016年10月29日

 大統領とお友達をめぐる大スキャンダル。事件の経過はすでに日本でも連日、報じられており、たとえば11月1日付の朝日新聞「朴政権『陰の実力者』」を逮捕『死ぬほどの罪犯した』」などに詳しい。

 もっとも、「死ぬほどの罪……」という表現は、韓国では謝罪するときの常套句で、文字通りに受け取ってはいけない。「私が悪かった。本当に申し訳ありません」という程度のニュアンスだ。

 さらに、勇み足の韓国メディアの報道からは漏れているが、実際にはかなり謎めいた部分もある。そもそも「機密文書が外部へ流出」というスクープの物証となったタブレットPCの入手経路が不可解だ。それについては、次回以降でふれるとして、いずれにしろ政治の潮目が変わったのは間違いない。11月4日現在の大統領の支持率は5%。国民の怒りはすさまじい。

「4・19のような革命を」とまで言う高齢者

 韓国人は感情表出がストレートだから、人々の怒りを目撃する場面は多い。しかし、今回は特別だ。それを感じたのは、スキャンダル発覚から5日後の10月29日、偶然に入った町内の美容院だった。

 60代後半の美容師さんとそこに集う高齢の常連さんたちは、みんな怒っていた。まさに口から泡を飛ばして怒っていた。まだ怒り足りぬというように、この数日間の怒りを復唱していた。「ムーダン(巫堂」に操られる国」「あんなひどい女に」「せっかく選んでやった大統領が」「父親が泣いている」

 驚いたのは、その先だ。

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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