メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

[14]「嫌韓都市・大阪」と東京のジェノサイド

『関東大震災朝鮮人虐殺の記録』(西崎雅夫編著)の重さ(上)

伊東順子 フリーライター・翻訳業

差別と憎悪の恐怖

 10月半ば、韓国のメディアで「嫌韓都市・大阪」というテーマがとりあげられたことがあった。

 「大阪はこれまで韓国人にもっとも人気がある都市だったのに……。いったい何があったんだ?」

 テレビニュースでは「わさびテロの大阪で、最近は韓国人の少年への暴行事件もあり、領事館では注意を呼びかけている」(10月11日、SBS)、あるいは「日本、大阪で観光客暴行…続く嫌韓なぜ?」(12日、KBS)などの報道が続き、新聞にも「大阪で韓国人相手に無差別暴行」などの記事が掲載された。うち日刊紙の一部は日本語版でも読むことができる。

わさびネットではこんな画像も
 「大阪の代表的な観光地である道頓堀で最近、韓国人観光客が相次いで『無差別暴行』を受けていたことが11日、確認された。大阪の寿司店の『外国人わさびテロ』、バス会社の『韓国人差別チケット』に続いて暴行事件までが発生し、大阪の韓国総領事館は韓国人観光客に注意を呼びかける案内文をホームページに掲示した」

 この「無差別暴行」は、原文では「ムッチマ暴行」であり、これはふだん通り魔事件などに使わる言葉だから、日本語訳とは少しニュアンスの違いはあるかもれしれない。

 また、バス会社の「韓国人差別チケット」については、「バス乗車券テロ」という呼び方で暴行と同じように批判するのは、むしろ「事件の拡大を面白がっているようで不愉快だ」という意見もあった。

 メディアと一般韓国人の反応にズレがあるのはいつものことで、現地の反応に関しては後でふれる。さらにここに、南海電鉄の「外国人が迷惑を……」という車内放送の問題が加わり、「日本では最近になり外国人に対する嫌悪感が増幅している」と解説されていた。

 ところで、このうち「バス乗車券」と「南海電鉄」の2件について、日本のメディア等で、当事者に「差別の意図はなかった」ことが報じられていた。

 おそらくそうなのだろうと思う。

 しかし、問題はそれでは終わらない。

・・・ログインして読む
(残り:約2457文字/本文:約3312文字)