2016年11月14日
テレビ局JTBCの「スクープ」から19日目、11月12日の夕刻、ソウルの中心部にある光化門広場は大統領の退陣を求める市民で埋まった。人々が手に手に持つロウソクが描き出した広大な光の海はかつてない広さで、その数は警察発表でさえ26万人という特大規模だった。
デモ隊の一部は夜を徹して大統領官邸に迫り、「大統領の下野」「即刻退陣」を叫び続けたが、その時、官邸内で大統領は何をしていたのだろうか?
「寝ていたんじゃないですか。そういう人だ。彼女には国民の声など聞こえない。あの父親と一緒だ」
ある年齢以上の韓国人にとっては37年前の同じ頃、彼女の父親に退陣を迫った学生や市民のデモが想起される。あの父親はデモ隊の要求を一切受け入れず強硬手段で弾圧、その結果、自ら不幸な結末を招いてしまった。
もう、今はそんな時代ではないと多くの人が思っている。だからこそ、大統領には自ら辞職する道を選んでほしい。怒りだけではなく、願いがある。この数日間、怒りの塊だった韓国の人々の気持ちに、微妙な変化があるように思う。
「韓国は民主共和国です」
12日の集会で何度も繰り返されたスローガンには、国民が主人公であり、問題は平和で民主的に解決されるべきだという確認だと思う。その上で、「辞職か、弾劾か」。近々、大統領の3回目の国民向け談話が行われるという予測もある。
「今日のロウソク集会が、最後の集会になるように、大統領は決断していただきたい」
12日、金大中元大統領の腹心として知られた野党の重鎮・朴智元氏は訴えた。
「韓国の大統領は普通に任期を終えられませんね」
と、東京の人から上から目線で言われると、
「おたくの知事もね」
と、言い返したくなる。ただ、10月24日のスクープ以降、堰を切ったように流される大量の情報には、私自身も面食らう。
「こんな大事件を、今まで韓国の人は全く知らなかったんですか?」
知らなかったわけではないのだ。しかし、こんなにひどいとは思わなかった。別の東京の人から、「いや、うちも豊洲市場の問題があります」と言われても、やはりスケールが違う。
「恥ずかしいですよ。一国の政治が、こんな連中に牛耳られていたことが。我々が民主主義と思っていたものは、幻想だったのかも知れません」
韓国人の友人たちは私たち外国人を前にすると一様に「恥ずかしい」という。それに対し、他の外国人は首をかしげるが、我々日本人にはわかる気がする。国家と個人の一体感が強いことも、海外の目をやたら気にすることもよく似ているからだ。
ただ、謎なのは、なぜメディアがこの問題を長らく放置してきたのかだ。ここにきての「一斉解禁」のような状況は理解しがたい。
「セヌリ党の親朴派が、朴槿恵大統領の秘線(ビソン)勢力への依存を早い時期から知っていたように、政権の至近距離にいたメディアもその実態に気づいていた。
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