メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

非核保有国と国際NPOを主役に核廃絶を目指せ

まず「核兵器先制使用・威嚇禁止条約」の成立を

児玉克哉 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

 広島と長崎に核兵器が落とされ、多くの人が「生き地獄」を経験したのは70余年前のことだ。日本は核兵器を許さないという決意と平和への思いを固めたはずであった。国連においても、日本は核兵器の全面廃絶にむけた国連決議を提案し、23年連続で可決・採択されている。日本が主導する核兵器廃絶の国連決議案はいわば理念決議のようなものだ。具体的な条約にも直接的に結びつくことはなく、努力目標の確認のようなものといえる。この総会決議には法的拘束力はない。

国連総会第1委員会で「核兵器禁止条約」の交渉開始を求める決議が採択され、喜ぶ核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメンバーら
 その国連で、より具体的な提案がなされた。10月27日に国連総会は「核兵器禁止条約」の制定に向けて、2017年より交渉を開始するという決議を採択した。その採択に際して、38カ国が反対票を投じた。その反対票を投じた国の中に、被爆国である日本が含まれていた。核兵器廃絶のためには世界の先頭に立つはずの日本が反対票を投じたことはかなりの衝撃であった。この行動に関して、岸田文雄外相は「核兵器国と非核兵器国の間の対立を一層助長し、その亀裂を深めるもの」と、今回取った判断理由を述べている。

対立を続けてきた核保有国と非保有国

 これまでの核軍縮の会議では、核兵器保有国と非核兵器保有国は対立を続けてきた。核拡散防止条約は基本的に核兵器保有国が核兵器の独占的な所有を維持することを決めたようなものだ。拡散を防止するだけでなく、核兵器保有国の核兵器の削減や廃絶も求めたものだが、現実にはほとんどその点は機能していない。核拡散防止条約は、第6条で核兵器保有国の核軍縮のために「誠実に核軍縮交渉を行う義務」が規定されている。しかし、核兵器保有国が中心となった条約は、彼らに有利な形になっており、広島・長崎への核兵器投下から70余年が経っても核廃絶の道は開けていない。核兵器保有国のご機嫌を伺いながら、核兵器をなくすことはできないのは歴史が示している。「ヤクザの取り締まりをヤクザが中心の会議で話をしても実効的なものはできない」のだ。

 この点において示唆的なのはオタワプロセスとオスロプロセスだ。対人地雷禁止条約がNGOやミドルパワーと呼ばれる国々の力で成立した。地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が創設され、国際的な運動として展開された。1996年にはカナダのオタワで対人地雷全面禁止にむけた国際会議が開催され、同年12月にオタワにて署名され、99年に発効した。これはオタワプロセスと呼ばれる。

 クラスター爆弾禁止条約も同様なプロセスによって実現された。クラスター爆弾は子爆弾に不発弾が多く、それが一般市民に対する被害につながり、「悪魔の爆弾」とさえ呼ばれていた。2006年ノルウェー政府はクラスター爆弾禁止に向けて動き出し、2007年2月にはクラスター爆弾禁止に関する国際会議を開催、有志国46カ国によるオスロ宣言が採択された。国際NGOとミドルパワーと呼ばれる中堅諸国がこのオスロプロセスの立役者であった。

核軍事大国が主役では、核軍縮に進歩はない

 この2つのプロセスで重要なのは、こうした兵器に依存し、条約の成立に反対する国は交渉の中心に入らず、それ以外の国が中心となって条約を成立させたことだ。反対する国の中には、アメリカやロシア、中国など軍事的大国が含まれている。従来の手法では、こうした大国が反対することによって条約が成立しないか、骨抜きの条約になるのである。実際にこの2つの条約は「絶対に成立しない」と言われたものだ。プロセスの主役がミドルパワーと呼ばれる中堅諸国と国際NGOになることによって、

・・・ログインして読む
(残り:約1178文字/本文:約2649文字)