崔順実(チェ・スンシル)被告の「利益誘導」報道だけでは捉え切れない
2016年11月28日
「韓国の怒りの正体が日本には正確に伝わっていないのではないか?」。そうした疑問が私の頭の中から離れない。
韓国の朴槿恵大統領が40年来の親友である崔順実(チェ・スンシル)被告に機密文書の確認や添削を依頼し、加えて、大統領と深い関係があったことを背景として崔被告が様々な分野に自らの利権を張り巡らせたことで、韓国では大規模なデモが毎週のように起き、大統領の支持率は歴代最低の4%にまで落ち込んでいる。
韓国ではその事件の実態を伝えるべく、微に入り細に入った報道がなされ、疑惑に関わった人が次々に登場する様子は「まるで韓流ドラマのようだ」との声が私の耳にも届く。
テレビのニュース番組は軒並み高視聴率を記録し、新聞の売れ行きも好調だという。日本でも、その情勢は常にトップニュースで伝えられ、それまで韓国人でも知らなかった関係者の名前をインターネットで検索すれば、様々な情報が目に飛び込んでくる。最近では、一般の日本人から、韓国の憲法における大統領の訴追や弾劾に関わる条文の内容を前提に話が進むことも珍しくない。
確かに、この10年ぐらいの間で日本において多くの韓国情報に触れられるようになり、様々な知識も増えた。しかし、今回の疑惑を注視する日本の状況に対して、私は何か違和感を持ってしまう。
述べられる情報の細かさは、韓国とほとんど変わらないにも関わらず、韓国人の思い、あるいは今回の怒りの本質が理解されていないように感じられるためである。そこで、今回はその正体について検討したい。
日本で一般に考えられているのは、「韓国の大統領が宗教色の強い強欲な女性に振り回され、利権を欲しいままにされたから、韓国人は怒っているのだろう」との認識である。
若者の朴槿恵大統領の支持率はほぼ0(ゼロ)%を記録し、強固な支持層であった高齢者層もその数字を大きく落としている。そうした状況に対して、「騙された可哀想な大統領に対して、なぜ韓国人はそれほど怒っているのか?」という意見すら日本では見られる。しかし、そこにこそ日本と韓国における認識の相違がある。
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